試合に出られない苦しさもリーグ優勝という最高の瞬間も。プロでの15年間は失敗と経験、そして『覇気』によって築かれてきた財産だ。ただ、人生はまだまだ、ここから。新しい挑戦にも『覇気』が欠かせない。 取材・構成=菅原梨恵 写真=高塩隆、BBM 覚悟で挑んだ1年
リーグ3連覇(2016~18年)の中で、ひと際元気に輝いていた。その姿に見る者の心は熱くなっていく。プロ野球選手・安部友裕の15年間は、決してスタープレーヤーのように華やかだったとは言えない。それでも『覇気』という言葉とともに、しっかりとしたインパクトを残した。 ──年が明けて、1月18日には引退・門出パーティーが行われました。
安部 あらためて、ひと区切りですね。ファンの方に見守られて、本当にうれしい限りでした。
──15年間のプロ野球人生を振り返ってみて今、思うところは?
安部 本当にいろいろな経験をさせてもらったな、というのが僕の中にありますね。ただ、15年と言っても、これからの人生を考えたときには、ほんの一部。ここから15年たっても、まだ48歳ですから。長い人生の中での一つの素晴らしい経験として、たくさんの思い出ができました。いいことも悪いことも。いろいろなポジション、いろいろな立場も経験しました。それこそ、イップスにもなりましたし。それでも、そのすべて、本当に充実したプロ野球人生でした。
──2008年にカープに入団して、15年まではなかなか出場試合数を増やすことができず、悔しい思いもされたと思います。
安部 まあ、もともと、そんなに実力があったわけじゃないですし(苦笑)。入ってからは「俺、本当にやっていけるのかな」という思いがありましたね。打つほうでは打球が前に飛ばないし、守備では飛んできた打球を処理しようと思ったらエラーするし。アマチュア時代との違いを痛感する日々でしたね。
──それでも、16年には115試合に出場。15年と16年の間で、どのような変化があったのでしょうか。
安部 腹がくくれました。完全に『覚悟』でしたね、僕の中では。完全に終わるな、クビになるな、というところからだったので、「もうやるしかない」というスタンスになった。気持ちが強くなれました。
──いい意味で開き直れた、と。
安部 そうです、そうです。15年オフに契約していただいて、「やった、この状況でまた1年あるんだ。わー、もうやるしかねえじゃん」と。どうせやるんだったら、楽しくやろう、元気出してやろう、というところからですかね。
──実際に試合出場が増えていくと、さらに気持ち的な変化もあったのでは?
安部 ありましたね、ガラッと。これまでとは全然違いました。
──安部さんが活躍する中、チームも25年ぶりのリーグ優勝を果たします。優勝が決まった9月10日の
巨人戦(東京ドーム)も七番・三塁でフル出場。優勝の瞬間というのはどんな気持ちでしたか。
安部 もう、まさかね、クビかもしれないというところから、どうせやるなら……となって・・・
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