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惜別球人2024

金子侑司(元西武) 引退惜別インタビュー 華やかなスピードスター「涙を流しているファンの方たちを見たとき、プロ野球の世界に入って少しやれたかなと感じました」

 

今季限りでユニフォームを脱ぐ決断を下した選手に野球人生を振り返ってもらう連載インタビュー「惜別球人」が今年もスタート。第1回は西武のスピードスターとして2度の盗塁王に輝いた金子侑司の登場だ。颯爽としたプレースタイルに隠されていた思いを語る。
取材・文=平尾類 写真=BBM

引退セレモニーを終え、万感あふれる表情でベンチに引き揚げた


前例のない引退セレモニー


「まだできる」――。惜しむ声が多かったが、今季限りで12年間の現役生活に終止符を打った。立命大からドラフト3位で西武に入団し、快足を生かしたプレーでチームに欠かせない存在に。甘いマスクで華やかな雰囲気を身にまとうが、負けん気の強い選手だった。

――引退試合となった9月15日、ベルーナでのロッテ戦後に行われたセレモニーで、スピーチではなく感謝の思いをつづった手紙という形で大型ビジョンに映し出されたのが印象的でした。

金子 自分の性格が出ました(笑)。引退セレモニーをやっていただける話になって、人と違うことをやりたいなって。あの形が思い浮かんで、調べたら今まで誰もやっていなかったので球団の方に協力してもらいました。スピーチだと感情が込み上げて早口になったり、詰まったりするかもしれなかったので、きれいに伝えたいという思いもありました。

――フル出場した引退試合はいかがでしたか。

金子 最高に幸せな1日でした。先発の佐々木(佐々木朗希)投手が変化球も投げてくれたので、ありがたかったです。直球だけで打てないよりも言い訳になるので(笑)。最後に球界を代表するすごい投手と対戦できてよかったです。

――8回の最終打席は二死満塁で遊直に倒れました。惜しかったですね。

金子 みんながくれた1打席で安打を打てればよかったけど、茶谷(茶谷健太)選手、ナイスキャッチです。無安打で終わりましたけど真剣勝負ですし、潔くやめられます。(8回一死満塁で見逃し三振してくれた元山飛優には)「ありがとう」と直接伝えました。自分の打席をフイにして回してくれて……。言葉では言い表すことのできない感情が湧き上がっていました。うれしかったですね。また、食事の席でゆっくりお礼を言おうと思います。

――引退セレモニーを終えて場内を一周する際、西武ファンが応援歌を歌う左翼スタンドの前で立ち止まり、数分間見つめていましたね。

金子 もうこの応援歌を歌ってもらえることがなくなるんだ、いい応援歌をつくってもらえたなあって。この光景を目に焼き付けて、大合唱を耳に残して終わろうと思って立ち止まりました。涙を流しているファンの方たちを見たとき、自分がプロ野球の世界に入って少しやれたかなと感じました。

――今年は一番・中堅で開幕スタメンを飾り、6月3日に二軍へ降格しましたが、イースタン・リーグで打率3割近い数字を残していました。

金子 開幕から使っていただいて、ファームに落ちたときも感覚は悪くなかった。打撃に関してはここ数年で一番良かったので、結果を残したらもう一度一軍に上がれるという思いでやっていました。でもなかなか上がれず、来年がイメージできなくなってしまった。8月中旬ぐらいですね。ボロボロになるまでやるのもカッコいいと思っていたんですけど、応援していただいている方たちに「やめないで」「まだできる」と思ってもらっているうちにやめるのも自分らしくていいかなと。やめることが頭をよぎっている時点で、続けられないなと引退を決断しました。

ラグビーに夢中の時期も


 12年間のプロ野球人生を全うしたが、幼いころから野球一筋というわけではなかった。さまざまなスポーツを経験し、最終的に選んだのが野球。他のスポーツに親しんだことも、金子にとって大きな礎になったのは間違いない。

――金子選手は球界屈指の俊足で活躍しました。幼少期から足が速かったんですか?

金子 そうですね。小6のときに京都市の100メートル走の大会に出場して・・・

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惜別球人

惜別球人

惜しまれながらユニフォームを脱いだ選手へのインタビュー。入団から引退までの軌跡をたどる。

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