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惜別球人2025

川端慎吾(元ヤクルト) 引退惜別インタビュー 燕一筋20年「ヤクルトの川端のまま終わりたい。その思いが決め手でした」

 

現役続行か引退か――。気持ちは揺れ動いた。悩み抜いた末に選んだのは「引退」の2文字。決め手となったのはヤクルトへの愛だった。『燕のプリンス』が激動の日々を振り返る。
文=長谷川晶一 写真=川口洋邦、早浪章弘、BBM

9月27日の広島戦[神宮]、現役最後のヒットは節目の通算1100安打に


現役続行か引退か野球どころではなかった


 芸術的なバットコントロールで2015年には首位打者、最多安打のタイトルを獲得。14年ぶりのリーグ制覇に貢献した。ベテランとなってからは代打の切り札として活躍。度重なる故障を乗り越え、21年の日本シリーズでは、日本一に導く一打も放った。「天才」と称された男がバットを置く。どのような思いで現役生活にピリオドを打ったのか。

――例年とはまったく異なるオフシーズンではないですか。

川端 これまでの20年間、ほぼ毎日体を動かしていたので、「こんなにじっとしていていいのかな?」という気持ちで、つい体を動かしたくなりますね(笑)。

――引退会見はシーズン終盤となる9月27日のことでした。引退までの経緯を教えてください。

川端 9月に入ってすぐに球団から引退についての話がありました。すぐに決められるようなことではなかったので、「ちょっと考えさせてください」とお願いして、二軍の試合に出場しながら、進退についてずっと考えていたけど、なかなか結論が出ずに、あそこまで時間がかかってしまいました。

――それほど現役続行に対する思いが強かったのですね。

川端 はい。正直言えば、「まだ野球がやりたい」という思いが強かったので……。でも、時間がたつにつれて、「ここでやめるのがいいのかな?」と、少しずつ気持ちが固まっていきました。

――残暑が厳しい9月中も、ファームで練習を続けながら、内心では進退についての葛藤があったのですね。

川端 正直、野球どころではなかったですね。でも、後輩たちもいるので、「変なところは見せられない」という思いで練習は続けていました。試合に出ていると「やっぱり続けたい」「まだできる」という思いは強くなるし、「でも、そろそろかな?」という思いもあって、気持ちはすごく揺れ動いていました。

――もしも現役続行を選択するなら、NPBの他球団はもちろん、国内独立リーグ、あるいは、韓国や台湾も視野に入っていたのですか。

川端 いいえ。そこまでは考えていなくて、「NPBでダメなら引退しよう」と決めていました。

――現役引退の決め手となったのは、どんな理由だったのですか。

川端 やっぱり「ヤクルトの川端で終わったほうがいいのかな、いや、終わりたい」という思いが絶対的にありました。結局、決め手はそれでしたね。体も動いていたし、気持ちも衰えていなかったけど、「ヤクルトの川端」のまま終わりたい。その思いが決め手でした。

――身体的、あるいは技術的な衰えは感じていたのですか。

川端 肉体的には感じていましたね。ここ数年、打球が飛ばなくなってきました。「もっと強く振りたい」という思いがあったので、今年は久々にバットを変えて臨みました。

――川端選手はずっと同じバットを使い続けていましたよね。

川端 プロ3年目くらいまではコロコロ、形状を変えていたんですけど、そこからはずっと変えていませんでした。でも、「なかなか強く振れないな」と感じていたので、今年は20〜30グラム軽くして、880〜890グラムのバットをコンパクトに振れるようにしました。結果を残すことはできなかったけど。

故障、手術、リハビリ 闘い続けた後半10年


 06年に高校生ドラフト3巡目でプロ入りし、20年を過ごした。「こんなに長くやれるとは思わなかった」と振り返る川端に、その日々についてあらためて語ってもらった。

――20年間の現役生活。長かったですか、あっという間でしたか。

川端 最初の10年間はすごく長くて、その後の10年間はあっという間でした。入団したばかりの若いころは、とにかく練習量が多くてきつかったし、苦しいことのほうが多かったので、すごく長く感じました。それ以降の10年間は故障に苦しみながらだったので、あっという間の出来事のような気がします。

――最初の10年間では、どんなことが印象に残っていますか。

川端 いやぁ、しんどかったですね(苦笑)。特に守備練習。守ることに必死で、バッティングのことは何も考えられないぐらいでした。あのころはショートを守っていて、サードが宮本(宮本慎也)さんだったんですけど、試合中のグラウンドでも、ベンチに戻ってからも、試合後もずっと指導を受けていましたね。

――節目となるプロ10年目の15年シーズン。チームは14年ぶりのリーグ制覇、ご自身も首位打者と最多安打のタイトルを獲得します。

川端 この年は最高の1年になりました。タイトルも獲れたし、優勝もできたし、何よりもフル出場もできた。何も言うことのない最高の1年でした。でも、この後からは・・・

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惜しまれながらユニフォームを脱いだ選手へのインタビュー。入団から引退までの軌跡をたどる。

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