近年、日本野球機構(NPB)やメジャー・リーグ機構(MLB)でプレーしていた選手が、独立リーグに移籍するケースが増えた。
レンジャーズを自由契約となった元
阪神の
藤川球児は6月1日、四国アイランドリーグplusの高知ファイティングドッグス入りを発表。昨オフには、レイズなどで活躍した元
ヤクルトの
岩村明憲が、ベースボール・チャレンジ・リーグ(BCL)の福島ホープスに選手兼任監督として入団している。また、現在
オリックスの主砲に座る
フランシスコ・カラバイヨが、高知、BCリーグの群馬ダイヤモンドペガサスからの“出戻り”加入を果たしたように、独立リーグとNPBの球団を行き来するケースも出てきた。

BCリーグにはメジャーで首位打者も獲得した元ロッテのフランコが所属するなど、ビッグネームが多い[写真=BBM]
総体的なレベルや報酬等の違いもあり、NPB、MLB経験者にとって身近な存在ではなかった独立リーグだが、今や新たなステップの選択肢の一つに変わりつつある。藤川に対しては阪神も獲得へのオファーを出していたが、交渉の末に故郷の独立リーグ球団でのプレーを希望。自身のブログで「必要とされる場所で投げたい。僕が投げる事で喜んでくれる人達の顔が見たいから」と、自身の意思による選択だったことを強調している。
広島をはじめとしたNPB球団が独立リーグ球団に若い選手、審判員を派遣するなど、両者間の交流も深まってきた。NPB側には実戦での経験を積ませる場が増え、独立リーグ側にはレベルの底上げとともに、人件費等を節約できるメリットがある。
昨春「NPB球団に復帰するチャンスを待つため」と公言して群馬入りした元
巨人の
アレックス・ラミレスら、独立リーグをファーム的な位置付けとする選手も出てきた。群馬をはじめ、「ウインウインの関係」として肯定する関係者の声も多い。受け皿の拡大は“次の戦力”のモチベーションにもなり、新たなファン獲得や普及にもつながる。
以前からあったのが、全盛期を過ぎた選手がプレーをする場を求めて入団する事例だ。最近では、NPBで外国人最多の通算464本塁打をマークした元近鉄の
タフィ・ローズが富山GRNサンダーバーズに入団。メジャー通算2586安打の大選手で、元ロッテの
フリオ・フランコは石川ミリオンスターズの選手兼任監督として現役に返り咲いている。
ビッグネームによる集客は、興行の手法として間違ってはいない。かつての大選手を懐かしんで応援するオールドファンも少なくはないだろうし、若い選手への生きた教材となることも多いだろう。だが、ローズは6年ぶりの現役復帰となる46歳で、フランコは56歳。ピークはすでに過ぎている。独立リーグの創設時に、「未来を担う選手のために」という理念・大義もあったはずだ。シニア・リーグやマスターズ・リーグの色も出てきた現状が、若手のチャンスを奪うことになるのではないかという疑念も生じる。
要は経営を維持するための集客法もにらみながら、プロ野球としてのレベルを維持するためのさじ加減、バランスが大事だ。それには利害関係者となったNPBの協力体勢も、大きなポイントになる。興行として割り切るのか、それともプロ野球界の一員としての発展を重視するのか。独立リーグはその岐路に立っている。