大舞台での活躍はないにもかかわらず、堂々とした体つきと投げ込むボールにスカウトは注目する。ボールのキレと低めの制球力が生命線。プレーにまだ粗削りな部分もあるが、野球センスの塊のようなプレーヤーだ。 取材・文=滝川和臣、写真=佐藤真一 
菰野は食べて体を大きくする「食トレ」に力を入れている。山田は入学時75キロだった体重が81キロまで増えた
オリックス西を超える素材の持ち主;
昨年、2年ぶりに2ケタ勝利をマークした
オリックスの
西勇輝が菰野高の3年だった当時、戸田直光監督は厳しい練習を課した。数カ月後に夏の甲子園に出場することになる西が試合でまったく失点しないことがかえって不安に感じられ、練習試合で3アウトを取りベンチに帰ってきたエースに、休むことなく外野ファウルエリアでのダッシュを命じ、そのまま次の回のマウンドに立たせた。「それを繰り返して体をへばらせて、ようやく失点しました」と高校時代の西のズバ抜けた能力を振り返った。
そんなエピソードを語る戸田監督に「素材は高校のときの西以上」と言わしめるのが現エースの
山田大樹だ。
中学の軟式で135キロを投げていたのを戸田監督の熱心な勧誘で菰野高への進学を決めた。ゆったりと始動するフォームは、小さなテークバックが特徴。スリークォーター気味に振られた右腕から繰り出されるボールはズドンと重い音を響かせながらキャッチーミットに収まる。身長175センチ81キロと上背はないものの、堂々たる体躯。特に太腿は競輪選手を思わせるほどで、ぱんぱんに筋肉が詰まっているのがユニフォームの上からでも見てとれる。2年春にエースとなると、1回戦の相可戦では1安打11三振を奪った。その春の県大会では147キロをマークしている。
練習の合間を縫って取材に応じてくれた山田大樹は、相手を威圧するほどの投げっぷりに反して、穏やかな雰囲気を漂わせる。戸田監督も「あいつが怒ったところを見たことがない」というほどだ。自身の長所を聞けば140キロ超の真っすぐでも、変化球でもなく「メンタル」と即答。「打たれ強くあること。点を取られても、次の1点は守ること」を挙げた。
最大の武器は速球よりも、ボールのキレと制球力だ。実は昨春マークした最速147キロは球速が高く表示される傾向にある伊勢市倉田山公園野球場での数字だった。戸田監督も「実際には142~143キロくらいでしょう」と話す。150キロを投げる投手であってもボールが甘く入れば、金属バットを使う高校野球では簡単にとらえられてしまう。一方で、山田のように重い真っすぐと縦のスライダー、フォークが低めに集まれば、どのカテゴリーでもそうそう打たれるものではない。本人も「球速だけを追い求めていません」とその点を自覚する。
2年秋のケガを乗り越えて
オリックスの西となにかと比較されることが多い山田だが、戸田監督の目から見るとタイプは異なるようだ。「ピッチングに柔軟性があったのが西。山田は・・・
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