序盤からキャッチボールで肩をならし、先発投手のケガなど、急きょ巡ってくる出番に備える。試合が終盤に差し掛かれば、毎回のように投球練習を行い、肩を仕上げていく。
「次の回の最初から、ランナーが出たら回の途中からも」。シナリオを描き、それに合わせて調整のピッチを上げる。「プレッシャーを感じるというより、抑えてやろうというのが先に来る」と登板に向け気持ちも徐々に高まっていく。もちろん、スタンバイを済ませても、出番がなく終わる日だってある。体も心も、すり減らしていく日々。
セットアップにワンポイントにと、どんな場面でも登板する、これがリリーフを専門とするプロ11年目、香月良太の日常だ。 文=三浦正(スポーツライター)
写真=桜井ひとし、BBM やみくもに投げていては、シーズンは長く、体力が持たない。強弱をつけなければ戦えない。
「毎回、全力では投げられない。肩を作らないといけないけど、いかに消耗しないようにするか、考えながらやっています」
プロ入り11年目で、紆余曲折を経てここまで来た。
巨人移籍前の
オリックスでも中継ぎを主な働き場としてきた男は、頭の中で常に試合の先を読んでいる。ただ、ゲームは生きものだけに予期せぬことも起こる。「難しいですよね」と苦笑し、野球の奥深さを今でも感じることが多いという。
2009年から4年連続で40試合以上に登板するなど、オリックスで実績を残し、13年にトレードで巨人に籍を移した。ただ、昨季は19試合の登板に終わり、防御率6.16と不本意な成績に終わる。オフは川崎市のジャイアンツ球場でひたすら投げ込んだ。季節が移り、寒さが厳しくなっても、香月の熱は帯びたまま。200球を投げ、1、2日を空けて、また200球。これが当たり前となり、気づけばプロ入り後、一番の球数を投げていた。
「がむしゃらに投げておこう、と思って。やってみようかなと。先発でも何でもできるようにしとこうかなと。危機感? そうですね、はい。みんながみんなそうだと思うけど、毎年、やっぱり勝負なので。競争が厳しいし、どうにか、生き残るためにと考えて、投げていたと思います」
カットボールに信頼
球数を重ねる中で、今まで苦手としていた球種に変化が表れた。体が“コツ”を習得したのか、外角に逃げていくカットボールの曲がりが大きくなったという。
「今まではちょっとしか曲がっていなくて、打たれていた。今までそんなに曲がり球に自信がなかったけど、自信が出てきました」
このボールが、今季の投球に絶妙なアクセントを加えた。
右腕の投球の軸は、プロ2年目に覚えたシュートだ。その球種がなければ、「プロでは通用していない」と本人も語る得意球。「(相手が)分かっていても、(右打者の)インコースに行かないといけない。内で勝負したい」とこだわりを持つ。ただ、懐に食い込むボールだけでは打者の目先を変えられない。どうしても、外に逃げる球種も必要だったが、これまではそのボールを痛打されることがあった。しかし、今は外角球でも勝負ができるほど、カットに信頼を置いている。
「(右打者が)勝手にシュートを意識してくれる。そこに、外を投げて、外を意識したら(今度は)シュートで詰まらせて」と口にするように、左右の変化の揺さぶりが効いているわけだ。
1つ例を挙げれば、7月23日の
阪神戦(甲子園)・・・
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