77試合に出場して157打数43安打、打率.274、2本塁打、20打点、7盗塁。ソフトバンク・川島慶三は残した数字以上の働きでチームを勝利に導いてきた。日本ハムで始まったプロのキャリアはヤクルトを経由して地元・九州のソフトバンクに行き着き、今年で10年目。積み重ねた経験を高い野球力に昇華させ、チームの欠かせない戦力となっている。 文=菊池仁志、写真=湯浅芳昭、太田裕史 勝利を手にする野球力
パ・リーグ連覇を果たした2015年のソフトバンク。9月17日の優勝決定はリーグ史上最速だった。その時点で85勝をマークし、貯金は47を数えた。勝率は.691。2位・日本ハムには14.5ゲームもの大差。他を圧倒する強さでフィニッシュテープを駆け抜けた。
リーグ優勝までの戦いを総括した
工藤公康監督がポイントに挙げた一つの試合がある。7月2日の
西武戦(ヤフオクドーム)、2点を追う9回にクローザーの
高橋朋己を攻め、逆転サヨナラ勝ちを収めたゲームだ。
「みんなが最後まであきらめずに、勝とうという気持ちを出していた。2点差で相手の抑えが出てきて、逆転した。そこでガーンとやっつけて、選手もやれるという気持ちになったと思う。それまではなかった展開で勝てた」

7月2日の西武戦では内川とお立ち台に上がり、このポーズ
工藤監督が興奮を隠さなかったこの試合の中でも絶賛したワンプレーがあった。
「タイミングはアウト。あれをセーフにできるのはこのチームにはほかにいない」
9回、1点差に迫ってなおも一死一、三塁の好機。三走にいたのが、川島慶三だった。川島はこの回、一死二塁の場面に代打で登場すると、遊撃への内野安打で一、三塁に好機を拡大。続く代打・
吉村裕基の右前適時打の間に三進していた。
「1点がどうしても欲しかった場面で、ゲッツーがありますから、僕としては打球が転がった瞬間にホームに行くっていう、それだけです。結果、ホームでアウトでも一、二塁に走者が残るし。スライディングは咄嗟の判断です」
打者・
明石健志の打球は投手の一塁寄りへの緩いゴロで、左腕・高橋朋にとっては、本塁送球に時間的ロスはない。それでも川島は捕手・炭谷銀仁朗のブロックをかいくぐる、アイデアに富んだヘッドスライディングで同点のホームに触れた。
4対3、最後は
内川聖一の犠飛でサヨナラ勝ちを収めたこの試合だけでなく、数々の試合でチームを勝利に近づけてきた。3対2で勝利した6月6日の
巨人戦(東京ドーム)では、4回に同点打を放っただけでなく、二塁手として中堅・
柳田悠岐と捕手・
高谷裕亮をつなぐ中継プレーで2回と8回の2度、巨人の本塁突入を阻止した。5月17日の西武戦(ヤフオクドーム)の5回に放った2年ぶりの本塁打は、それまで散発2安打に抑えられていた
郭俊麟から放った先制ソロ。郭の出来から「後ろは九番、一番。連打はない」と考え、「浮いた球は長打に」と狙いを澄ませていた。指揮官が「あれで一気にムードが良くなった」と破顔した4対1の快勝だった。
15年シーズンの川島の働きは、攻守走、多岐にわたってチームの勝利に貢献する貴重なものだった。野球がチームスポーツであり、勝敗には複雑怪奇な事象が介在するため、特筆すべきデータではないかもしれないが、一つ挙げておく。優勝までに川島が先発出場した34試合のチームの勝敗は26勝7敗1分け。勝率は.788をマークした。
「監督の采配やベンチの指示どおりに働けるように練習をやっているんで、試合ではそれしか考えてないんです。例えば打撃ならサインが出たらそれを実行する、出てなかったら何とか塁に出る。シンプルに考えています」と本人はそっけないが、ヤクルト時代から知る
飯田哲也外野守備走塁コーチの川島評はこうだ・・・
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