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野球浪漫2016

阪神・大和 “中堅組”が挑む超変革、そして家族がくれる力

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前田家の思いのすべてを心に刻み


今季も二塁と中堅のユーティリティープレーヤーとしてチーム状況に合わせての試合出場が続いている。それでも今は「心」がブレることなく、結果を求めてプレーしている


 大和。その読みは「やまと」。以前は「宇宙戦艦ヤマト」を登場曲に選んでいた。父の利和は陸上自衛隊に長年勤務。名前の由来は戦艦大和や宇宙戦艦にありそうだが、実は違う。父、そして兄の大輔から1文字ずつもらった。

「2人の魂が入っているんです」

 末っ子はそう笑う。

 地元の鹿児島・鹿屋市内で幼稚園に通っていたころはバリバリのサッカー少年だった。当時はJリーグが発足した直後。ヴェルディ川崎を愛し、休み時間になれば「カズダンス」の精度を友達と競い合った。卒園前、カセットテープに将来の夢を吹き込んだときも「Jリーガーになりたいです!」と宣言していたが……。小学1年生のとき、半ば強制的に地元の鹿屋ソフトボールスポーツ少年団に入部させられた。

「両親が共働き。学校が終わってから1人では危ないということで、地元のスポーツクラブに入れさせたらしいです。Jリーガーになりたかったのに、まあ短い夢でしたよ」

 もともとプロ野球選手に憧れていたわけではなかった。ソフトボールにはまり、樟南高校野球部の先輩でもある兄・大輔さんの甲子園出場を聖地で応援したときも、まだ「野球で飯を食おう」とは考えもしなかった。覚悟を決めたのは高校3年の夏だ。

「おやじの涙を初めて見て、さすがに僕もね……」

 樟南高の主軸として、甲子園で最後の夏を終えた夜。宿舎で父が号泣しながら抱きついてきた。

「よく頑張った!ありがとうな!」

 泣けた。今度はプロの世界で恩返ししよう──。確固たる目標を与えてくれたのは家族。プロ入り後、苦境に立たされるたびに救ってくれたのもまた、家族だった・・・

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苦悩しながらもプロ野球選手としてファンの期待に応え、ひたむきにプレーする選手に焦点を当てた読み物。

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