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野球浪漫2016

スペシャリスト・赤松真人のチームへの貢献 「今のカープはすごくいい環境にある」

 

発想の転換で不可欠な切り札に


試合中にもチームメートと情報交換。チーム全体で情報を共有し、一丸となって勝利を目指す


 迎えたプロ9年目のシーズン。赤松の新たな挑戦が始まった。レギュラーになれないのなら、どうやってチームに貢献できるか。考えた先に出した答えは、走塁・守備のスペシャリストへの道だった。

「スコアラーの方から各球団の配球表をもらい、捕手のクセ、投手のクセに注目するようになりました」

 さらにそれまでも行っていた試合中のメモも、内容をがらりと変えた。

「それまでメモしていたのはほぼバッティングについて。やっぱり打てないとレギュラーにはなれないですからね。でも、そのポジションに行くということは、走塁、守備に全力を注ぎ込めばいい」

 けん制の仕草などに注目し、相手投手の動作を丸裸にしていった。しかもそのメモをチームメートと共有。求められれば喜んで公開した。その結果、試合数は前年の76試合から85試合に増加。打数は246から60へ4分の1以下となったが、シーズンを通して一軍に帯同。チーム初のCS出場に貢献した。さらに14年もフル一軍を果たし、2年連続のAクラス入り。15年には国内FA権を獲得したが、「カープが好きだから」と迷うことなく残留を決めた。

 そして広島での9年目となる現在も変わらずにここ一番の切り札として、チームに不可欠な存在となっている。

 今季は打席でも好調だ。6月14日の西武戦[マツダ広島]では2対2で迎えた9回二死一、二塁で打席に立ち、中前へ安打。二走の菊池が一気にホームを突き、いったんはタッチアウトと判定されたものの、抗議の末にコリジョンルールが適用され、自身6年ぶりのサヨナラ打となった。

 この試合では8回に代走で途中出場。チャンスの場面にも信頼し、打席へと向かわせた緒方孝市監督の期待に応えた。

「今は、『腐っても1打席』と思っているんです。以前だったら、『何で俺なんだ。1年間でろくに打席も立っていない選手が何でここ一番で』という部分もありました。でも、それで打てなかったら自分にイライラしてしまうし、マイナスしかないんですよね。そうではなく、どんな状況であれ、どんな展開であれ、1打席というのはすごく大事にしないといけない。僕の場合はなかなか打席をもらえないから、余計に楽しみたいんですよね」

 まさかの殊勲打に喜んだのはチームだけではない。海の向こう、今季からドジャースに移籍した元チームメートの前田健太は、自身のブログにこうつづった。

「僕のバッティングのライバル赤松さん。赤松さんよりヒットを打つ。赤松さんにサヨナラヒットはまぁまぁ良かったですねって誰か伝えといてください。笑」

 後輩からのメッセージに赤松は苦笑する。

「あいつは打席に入るたびに僕を見るんですよね。バッティングでも技術があるので、わざとファウルを打つんですよ。そして『こうやってファウルを打つんですよ』と僕を見て目で訴えるんです。それだけ余裕がある。リラックスして打席に入っているんですよね。だから打てるんです」

 ヒントをもらっているのは前田からだけではない。現在の考え方には、丸や菊池ら、主力を張る若手からの影響が大きいという。

「レギュラー陣はオンとオフがうまいですよ。僕がずっと試合に出ていたときの感じではない。打てなくても、失敗してもへこまない。それが素晴らしい。引きずらないです。まったく。20打席くらい打てなくても笑っていますし、自分をしっかり持っている。若手からも吸収できることは吸収しないといけない。もちろん若い選手も、新井(貴浩)さんや黒田(博樹)さんに話を聞きに行くべき。今のカープはすごくいい環境にあると思いますね」

 先輩だから、後輩だからというわけではなく、生かせるものは積極的に吸収する。そのどん欲さが、現在の活躍につながっている。

 今も試合中には、スタメン選手と言葉を交わす赤松の姿がある。赤松からはベンチから見た相手投手の特徴や傾向を、スタメン選手からはベンチでは分からない試合中の生の情報を伝えてもらい、途中出場でもスムーズに試合に出られるようにしているという。

 今季、緒方監督がたびたび口にした「チーム一丸」というキーワード。広島の強さの秘訣が、ここにある。

「優勝を狙える位置でプレーできているのはすごく練習になるし、それが今後の大きな財産になると思います。巨人が強いと言われるのは、常にこういう状況で戦っているから。だから毎年、上位にいるんですよね。広島も今年だけだったらまた落ちてしまう。今の状況をずっと維持しないといけません。来年また3位になりました、ではなく、この位置を維持できれば強いチームになれる」

 再び訪れようとしているカープ黄金時代。チームが球史に名を残すために、このスペシャリストが大きな役割を果たすかもしれない。
野球浪漫

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苦悩しながらもプロ野球選手としてファンの期待に応え、ひたむきにプレーする選手に焦点を当てた読み物。

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