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野球浪漫 進むべき道を切り開け~勇往邁進~
巨人・脇谷亮太 “夢”「その状況を把握した上で準備を尽くす」
巨人・脇谷亮太 “夢”「その状況を把握した上で準備を尽くす」

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その人が欠けているとチームに何かが足りない。その存在があるだけで、なぜかベンチは安心感に包まれる。巨人で言えば、それがこの男なのかもしれない。脇谷亮太、35歳。時には分厚い代打陣の切り札の1人として、時には二塁のスタメンとして、いぶし銀の活躍でチームを盛り立てる。プロ12年目。波乱万丈のプロ野球人生は、まだまだ終わらない。
文=西村海(読売新聞東京本社運動部)、写真=小山真司、BBM

ほかの選手がマネできない勝負強さが最大の持ち味


 新たなシーズンを占う今季のオープン戦。巨人は5勝14敗と振るわず、12球団で最下位に沈んだ。最終戦翌日の3月27日、東京ドームで行われた全体練習に脇谷亮太は呼ばれ、一軍合流を果たした。「開幕前に声がかかって良かったよ」。ジャイアンツ球場でイースタン・リーグ出場を重ねて真っ黒になった顔に、白い歯が浮かんだ。

 若手の底上げをテーマの1つに掲げた今年の春季キャンプは、高卒3年目の岡本和真、高卒5年目の辻東倫、大卒2年目の重信慎之介山本泰寛らが一軍に名を連ねた。脇谷だけでなく、亀井善行寺内崇幸といった実績のあるベテランは二軍スタートとなった。それは、高橋由伸監督が若手の台頭を望む一方、ベテランの調整を信頼している証しでもあった。

 若手中心で臨んだオープン戦で巨人は打撃不振を極め、チーム打率も.196と低迷していた。そんな中、キャンプから順調に調整を続け、イースタン・リーグ5試合で15打数9安打、打率6割と打ちまくっていた脇谷の開幕前の一軍昇格は必然とも言えた。

 開幕2戦目の4月1日の中日戦[東京ドーム]。7回に代打で今季初安打を放ち、サヨナラ勝ちに貢献した。同4日のDeNA戦[横浜]でも同点の8回に代打で安打を放って口火を切り、勝ち越し劇を呼び込んだ。亀井とともに左の代打として欠かせない存在であることをアピールした。

 大分・柳ヶ浦高から日本文理大、NTT西日本へと進み、2005年秋のドラフト会議で大学・社会人ドラフトの5巡目で指名され巨人入団を果たした。「指名が予想された選手たちは会見場で指名を待っていたけど、まさか指名されると思っていなかったから、グラウンドで練習していた」。慌ててシャワーを浴び、スーツに着替えて会見に臨んだのは、今でも忘れられない思い出の1つだ。

 当時の巨人の野手は、仁志敏久清水隆行小久保裕紀、高橋由伸、二岡智宏阿部慎之助、李承燁らそうそうたるメンバーが顔をそろえていた。「二軍の投手と対戦していたときは『俺も結構やれるんじゃないか』と思っていた。でも、二軍で調整している一軍レベルの投手と対戦して、『やっぱり違うな』と。それをカンカン打つ選手が巨人にはいっぱいいる。正直場違いだと思うこともあったね」

 それでも、1年目の06年の6月、小久保の骨折による故障離脱とともに一軍昇格を果たす。50メートル5秒7の俊足巧打の二塁手として、この年は60試合に出場した。その後は、長らく不在が続いた正二塁手の最有力候補として期待が掛かったが、なかなかその座をつかみ切れなかった。ただ、脇谷にはほかの選手がマネできない勝負強さがあった・・・

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