守備と足のスペシャリストが陥った、ヒットから見放される日々。それでも、育成でプロの世界に飛び込み、先の見えなかった24歳のころを思えば、くじけるわけにも、あきらめるわけにもいかない。 文=田口礼(フリーライター) 写真=榎本郁也、BBM 大学を辞め闇の中に迷い込む
「やった。やっと打てた──」 心の中に安堵(あんど)と歓喜の感情が混ざり合い、言いようのない幸福感に包まれる。ただ、それはいつも目を開けるまでの限定的なものだった。
岡田幸文は、ほぼ毎日、同じ夢に踊らされ、朝が来るとともに落胆する生活を送っている。10年目となった単身赴任生活。その1日のほとんどは、ため息とともに始まる。
「毎日、夢は見ます。ヒット打っているんですよ。ただ、起きたら『ああ、夢か……』となりますよね」 7月24日の
ソフトバンク戦(京セラドーム)。延長12回無死一塁、途中出場していた岡田はベンチの指示どおりに送りバントを成功させた。ただ、2016年10月4日の
楽天戦(QVCマリン)以来、「H」のランプから見放され続け、これで57打席連続無安打になった。1976~77年に南海・
桜井輝秀が記録した58打席連続無安打の野手としてのプロ野球記録にあと「1」となった。
「何でもいいんですよ。どんなにいい当たりをしたとしても正面を突けばアウト。どれだけボテボテの打球だってヒットはヒットですからね」 足かけ3年、思い続ける欲求はヒットを打てない打席が増えるにつれ、増している。
それでも・・・
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