プロ入り7年目で、年齢は30代半ばに差し掛かっている。2014年途中にヤクルトへ移籍して6年目の今季は白星なしに終わった。危機感を抱いた右腕は、これまで拒んできた変化を求め、輝ける舞台へはい上がろうとしている。 文=菊田康彦 写真=高塩隆、BBM 「0勝」からの再出発
一時は“絶滅危惧種”のように言われていたアンダースローが今、再び脚光を浴びている。
ソフトバンクの
高橋礼がプロ2年目にして、下手投げでは2012年の
牧田和久(当時
西武)以来の2ケタ勝利をマーク。この秋のWBSCプレミア12でも、優勝を決めた韓国との決勝で2イニングを抑えて勝利投手になるなど、新世代のサブマリンとして存在感を見せつけた。
「侍ジャパン、10年ぶり世界一」の舞台となった東京ドームからおよそ20キロ。埼玉県戸田市にあるヤクルトの二軍施設では、かつては高橋と同じようにソフトバンクのユニフォームに袖を通していたアンダーハンドが、黙々とトレーニングに励んでいた。
「一生懸命やることで、試合にも影響が出ると思うんです。ピッチャーはキツいときにどれだけ粘って抑えられるかっていうのが大事だし、そういう意識は練習から必要だと思います。そこは絶対に試合につながってくると思うので、地味な体力トレーニングでも一つひとつ集中して、意識を高く持ってやってます」 山中浩史、34歳。15年にはプロ初勝利から6連勝の快進撃でヤクルトのセ・リーグ優勝に貢献した「燕のサブマリン」も、今季の一軍登板はわずか4試合。15年以降では、初めて一軍で白星を手にすることのないままシーズンを終えていた。
「いやあ、面白くなかったですね、今シーズンは。やっぱり一軍で投げないと面白くないし、一軍で結果を残したいという思いもあったんですけどね……。まあ、苦しかったですけど、それが絶対にいい経験になると思って、ポジティブに考えながらファームで生活してました」 プロ7年目の今年は、春季キャンプ最終日に下半身のコンディション不良で離脱。開幕は二軍、イースタン・リーグ初登板も5月に入ってからと、大きく出遅れた。5月末にブルペン要員として一軍に呼ばれたが、中継ぎで結果を出せず、ほどなくして二軍に逆戻りとなってしまう。シーズンも後半戦に入った7月21日には、前年まで通算7勝3敗と相性抜群だった
阪神戦(甲子園)に先発するも、5回3失点で敗戦投手になると、再び一軍から声がかかることはなかった。
「(戦力外も)覚悟してました。(7月の)阪神戦が終わったぐらいで『今年で終わりかな』って……」 しかし、それも杞憂に終わり、迎えたこのオフの秋季練習では、山中は2つの課題に取り組んだ。まずは・・・
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