ルーキーイヤーの開幕戦から出場機会を得るなど、誰もがスター街道を歩んでいると思っていた。だが、湿り続けるバット、若手の台頭などで徐々に出番が限られていく。迎えた2022年、新たな肩書も加わり、これまでとは違う姿を見せることを誓っている。 文=福島定一(スポーツライター) 写真=榎本郁也、小山真司、高塩隆、BBM 
甘いマスクと笑顔の裏で、苦悩しながら前に進んできた
サプライズの開幕スタメン
2022年3月25日。
中日との開幕戦を直前に控えた
巨人の首脳陣、選手、スタッフが東京ドーム内のブルペンに集結していた。全員で手をつなぎ、大きな輪をつくる。その中心にいたのが、
小林誠司だった。
「いよいよ今日から開幕します。(負傷離脱中の)勇人(坂本勇人)さんも、本当につらい思いをしていると思います。今までやってきたこと、全員が自分を信じて、監督、コーチ、スタッフ、裏方さんが本当に太い束になって。長いシーズンですけど、一つひとつ、いいときも悪いときも、全部がリーグ優勝、日本一につながる道だと思うんで。信じて、全員でカバーし合って、1年間戦っていきましょう。さあ、行こう!」 拍手がわき起こる。心も一つになった。小林の声出しの前には
原辰徳監督が訓示。指揮官は主将・坂本不在のチームに対し「独断の中で」と、小林をキャプテン代行にサプライズ指名していた。一瞬、驚いた表情を浮かべた小林だったが、すぐに指揮官の左隣へと進み、手を固くつなぐ。開幕戦に向かうチームを、言葉で鼓舞した。
開幕前日にも、サプライズはあった。東京ドームのグラウンドで報道陣の開幕前日取材に応じた原監督が、質疑応答を一通り終えたところで自らこう切り出した。
「キャッチャーが気になるところでしょう? 明日は智之(
菅野智之)と小林、最強バッテリーの中でスタートを切るというところ」
メディアの向こうにいるファンを思う、原監督らしいリップサービスだった。それでも小林の起用には驚きがあった。開幕投手の菅野はオープン戦3試合に登板して調整を重ねてきたが、そのすべてで
大城卓三がマスクを被っていた。だが、3月5日の
日本ハム戦(札幌ドーム)は2回無失点ながら、11日の
オリックス戦(京セラドーム)は4回6失点、さらに18日の
ロッテ戦(東京ドーム)も5回4失点と思うような数字を残せずにいた。
一方の小林は新型コロナウイルスの感染により出遅れたものの、3月12日のオリックス戦(京セラドーム)でオープン戦1号ソロを記録。その後も課題とされる打撃で好調を維持し、オープン戦を打率.444で終えていた。指揮官はそんな背番号22を「取り組む姿勢も含め、リーダーシップというものを強く持っている人ですから」と高く評価した。今季の巨人は「菅野-小林」の同級生バッテリーで幕を開けることになった。
25日の中日との開幕戦(東京ドーム)。菅野は6回を7安打2失点にまとめ、球団新記録となる開幕戦5勝目をマークした。小林とのバッテリーは昨年11月11日のクライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージ、
ヤクルト戦(神宮)以来、実に134日ぶりだった。試合後のエースが「急に決まったので」と明かしたように、原監督の言う最強バッテリーにとっても、この日のコンビは想定外だったようだ。それでも・・・
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