1年目に初登板初勝利の鮮烈デビューを遂げたドラフト2位左腕。しかし、その後は好不調の波もあり思うような結果を残せずにいた。今季中継ぎとして輝きを取り戻した男はいかにしてプロの世界へと足を踏み入れ今に至ったのか。 文=石塚隆 写真=兼村竜介、BBM 任された場所で結果を
ハートは熱く、頭は冷静に──。
プロ5年目、坂本裕哉の生まれ変わったようなピッチング。気持ちがボールに宿っている。
今季は左肩痛で出遅れたものの、5月8日に一軍登録されると、9試合連続無失点を記録する上々のスタートを切り、5月25日の
広島戦(横浜)ではプロ初となるホールドをマークした。
「中継ぎの仕事の最大の成果であるホールドを挙げられたのはすごくうれしいですし、これからも積み重ねていきたい」 坂本は目を輝かせ、そう言った。
そして6月4日の
オリックス戦(横浜)、2対1でリードする8回表、二死一、二塁の場面で
山崎康晃に代わり、坂本がマウンドに上がった。相手は球界屈指の好打者である
西川龍馬。一打逆転のピンチだが、臆することなくカットボールを中心にインサイドへ投げ込み、最後は空振りの三振。雄々しい叫び声を上げながらガッツポーズを決めた。
「やる仕事は決まっているし、ハードな場面でしたけど、ここを任せてもらえるんだって、ありがたい気持ちでマウンドに上がることができました」 気合の入った印象的な表情。
伊勢大夢や
J.B.ウェンデルケン、
入江大生らの離脱で厳しい状況にある今季のブルペンにおいて、僅差のビハインドから回またぎ、そして火消しまでを担う貴重な左腕リリーバーとして坂本は、頼られる存在として確かな足跡を残している。
振り返れば過去2シーズン、勝ち星に恵まれず、また配置転換もあって苦しい時間が続いていた。だからこそ坂本は、実感を込めて真摯(しんし)に言うのだ。
「今必要とされる場所でやるというのが、チームはもちろん自分の今とこれからにとっても大事なことだと思うんで、とにかく任されたところを全力で投げたいと思います」 1997年生まれ、福岡県福岡市西区出身。育った町の名は“横浜”と言い、どこか不思議な縁を感じさせる。
野球を始めたのは小学校4年時だ。それまで4歳からサッカーをやっていたが・・・
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