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野球浪漫2024

西武・青山美夏人 最後は氣持ち「“氣持ち”がなかったら勝ててなかった試合も多かったと思います」

 

新人ながら開幕戦でクローザーに抜擢された昨年。勝利目前で“失敗”を犯したが、それを糧にして前に進んできた。先発転向した今季、プロ初勝利を完封で飾るなど、成長を見せつつある。“氣持ち”が武器である2年目右腕の今後が楽しみだ。
文=上岡真里江 写真=桜井ひとし、BBM


1年目に積んだ多くの経験


 それは、あまりに“鮮烈”なデビュー戦だった。

 2023年3月31日。本拠地・ベルーナドームで行われた開幕のオリックス戦、2対1と1点リードの9回表のマウンドにコールされたのは、青山美夏人の名前だった。前年度日本一チームの、三番から始まる強力打線に対し、松井稼頭央監督は、大卒ルーキー右腕を大抜擢したのだった。

 先頭打者の西野真弘をファーストゴロ、四番・杉本裕太郎をショートゴロと、新人ながら持ち前のマウンド度胸で着々とアウトを重ね、ファンを含め、ライオンズに関わる誰もが「大物新守護神誕生」への予感を深めつつあった。だが、その希望は、一瞬にして打ち砕かれた。3人目の打者としてバッターボックスに迎えたのは、22年までライオンズに在籍し、主軸の一人として打線を牽引していた森友哉だった。

 その初球、青山が最も自信を持つフォークボールをライトスタンドへ運ばれ、一瞬にして勝利は目の前から消え去った。結果、次打者・中川圭太をライトフライに打ち取り、同点で止めたものの、チームは10回表に失点し逆転負け。青山はキャリア初日にして、失投を決して見逃してはくれないプロの超一流打者の技術力の高さ、“一球”の強さ、そして“クローザー”というポジションが背負う責任の重さを思い知らされたのだった。

 だが、そこで自信を喪失し、引きずる程度のメンタルの投手なのであれば、豊田清投手コーチがシーズンに勢いをつけるための重要な開幕戦の抑えに、わざわざ新人右腕の起用を指揮官に進言するはずがない。プロの洗礼を浴びた青山だったが、翌日には「早く借りを返したい」とリベンジに燃えていた。そして、連敗で迎えた同カード3戦目。4対1と3点リードで迎えた9回表に、雪辱のチャンスは巡ってきた。安打と四球で一死一、二塁のピンチを招いたが、続く九番・茶野篤政をレフトフライ、一番・野口智哉をショートフライに打ち取り、プロ初セーブを記録した。

 23年シーズン最初のお立ち台に上がった22歳は、「これから長いシーズンになると思いますが、自分が最後を締めくくって、もっともっと勝利を届けたいと思います」と初々しく宣言したが、その後は、セーブシチュエーション以外での登板も少なくなく、セットアッパーやビハインドの場面など、さまざまなポジションで起用された。

 そこには、チームの将来を担うべく豊かな才能への大きな期待が込められていた。初セーブを挙げて間もなくのころの豊田コーチの言葉からも、その思いは汲み取れる。

「まだ1年目ですし、今回の(開幕戦のセーブ失敗の)経験もそうですが、今後もいろいろな経験をしてほしいなと思っています。シーズン中に・・・

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