海の向こうのプロ野球に刺激を受けた台湾の野球少年は、大学を卒業後、日本でプロとしてのキャリアを踏み出した。異国の地で結果を残し、今や犬鷲軍団に欠かせぬリリーバーだ。32歳を迎えた現在、使命は勝利をもたらす投球だけではない。いつか同じマウンドを踏む、次の世代のためにも腕を振っている。 文=田口元義(フリーライター) 写真=兼村竜介、BBM 異国の地を選んだ理由
楽天の宋家豪が好きな日本語は、誰もがあいさつのように用いる、なじみのあるねぎらいの言葉だという。
「お疲れさまです!」 宋が軽快なノリで声を張る。
発音は日本人のそれと遜色ない。囲み取材やインタビューでは通訳を介して話すが、日常会話ならば頼りを得ずともこなせる。
9年。それは、宋が日本で自立するには十分な時間である。
「今では生活のリズムも慣れてきています。楽天に入ってから日本が好きになりました」 楽天では338試合に登板し、通算139ホールドポイント(HP)を記録する(10月3日現在)。この成績こそ彼が進んできた道が正しかったことを証明している。
宋は
「与えられた仕事をこなすだけです」と謙虚に振る舞いながらも、自らの歩みをしみじみと綴る。
「レベルの高い環境で野球をすることが自分にとってプラスだと考えていますし、挑戦し続けることが大事なんだと思っています」 台湾出身でありながら、宋は少年時代から日本プロ野球に刺激を受けてきた。
西武に入団1年目から16勝を挙げ、エースとしてチームをけん引した
松坂大輔。2013年のレギュラーシーズン24勝無敗という驚異的なパフォーマンスによって、楽天初の日本一の立役者となった
田中将大。日本のみならず、メジャー・リーグの舞台でも名をはせたエースたちの名を真っ先に挙げる。いつしか、宋の夢は台湾を越え、日本に向けられるようになっていた。
台湾国立体育大時代の15年。宋は台湾プロ野球の統一ライオンズからドラフト2位指名を受けたが・・・
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