中学では日本代表に選ばれ正捕手を担い高校入学後は1年夏から四番を任され通算42本塁打。打撃が自慢も初本塁打を記録したのは8年目。ケガなどもあり順調でない中で見つけたプロの世界で生きていくための新しいすべとは? 文=田口元義(フリーライター) 写真=井沢雄一郎、高原由佳、BBM 8年目で得た収穫
身長は172cm。プロ野球選手としては小柄な部類に属する。しかし、96kgという体重が楽天の石原彪をどっしりとさせている。その体躯が、昔ながらの“あんこ型”と呼ばれているからと言えばそれまでだが、漂う堂々たる佇まいは石原自身が作り上げているものだ。
昨シーズン、プロ8年目のキャッチャーは自己最多となる68試合に出場した。遅咲きながらも確かな足跡を刻めたわけだが、まるで他人事のように自身のキャリアハイを紡ぐ姿は、実に落ち着き払っていた。
「多分、プロ野球選手で満足のいくシーズンを過ごした人って、あんまりいないんじゃないかなって。やっぱり打てへんかったら悔しいっていうこともあったりするんで」 146打数25安打、打率.171という数字が反省を濃くする。この
「満足している人は少ない」という自己評価は、選手のひとつの真理でもある。首位打者であっても打率は3割3分程度で、7割近くを失敗していることになる。その側面から論じれば、彼らは常に反省と向き合っていることとなるし、石原とて例外ではないのである。
冷静に自己分析をするなか、石原が少し表情を和らげながら
「まあ……」と言葉を接続する。
「これまでケガが多かったので、僕としては『ちゃんとできた』っていうのが一番でしたかね」 7年間で27試合しか出場できなかった選手にとって昨シーズンは、実績以上に1年間を戦い抜けたことが何よりの収穫だったといえる。
「ちゃんとできた」 石原のキャリアを紐解くほど、この意味の深さを知ることができる。
プロに入るまでは、試合に出ることが当たり前どころか、世代を代表するキャッチャーだった。
中学時代に所属していた京都南山城ボーイズでは主力を務め、U-15日本代表にも選ばれた。アジアチャレンジカップ2013でも正捕手を担い、千葉市シニアで名を馳せていた
藤平尚真とバッテリーを組んだ。京都翔英高に進んでからも1年生から四番バッターとなり、3年夏にはキャプテンとしてチームをけん引。甲子園出場を果たした。初戦で樟南高に敗れたものの、ツーベースヒット2本と存在感を示している。
石原の持ち味は、高校通算ホームラン42本というバッティングのみならず、守備も光っていた。遠投125メートルの強肩に加え、ピッチャーのボールを捕ってからセカンドベースまでの送球タイムは1.8秒台と速い。当時から90kg前後の体重を有していたこともあり・・・
この続きはプレミアムサービス
登録でご覧になれます。
まずは体験!登録後7日間無料
登録すると、2万本以上のすべての特集・インタビュー・コラムが読み放題となります。
登録済みの方はこちらからログイン