背番号も一新し、ケガからの復活を懸けた2025年。攻守にわたる活躍で出場数はキャリアハイを大幅に更新、スタメンマスク数は正捕手・中村悠平を上回った。しかし、チームはシーズンの大半を最下位で過ごす。勝利をもたらす存在となるため、思考する日々が続く。 文=生島淳 写真=桜井ひとし、井田新輔 外から見る野球で得た学び
9月9日、神宮。ひとつでも順位を上げたいヤクルトにとっては、接戦をモノにすることが重要だ。
3対2とヤクルトが1点リードした9回表、申告敬遠、暴投、意図せぬ四球なども絡んで
中日が二死満塁と攻め立てる。マウンドには
星知弥、マスクをかぶるのは古賀優大。打席には
福永裕基を迎えていた。古賀は星にストレートを要求したが、カウント2-0と劣勢に立つ。
「押し出しは避けたかったので、ストライクを取れる球種で押していくしかなかったんですが……ボール2つの後にストライクを2つ取れたのが大きかったです」 ファウル2つもカウントは2-2、ここまで6球続けての真っすぐ。さて、いつ星の決め球であるフォークを使うのか。心理戦が続く中で、古賀は考える。
「福永さんの反応、様子を見ながら、いつフォークを投げるという駆け引きでした」 7球目、ついにフォークを要求、空振り三振でゲームセット。古賀は全身で喜びを表した。
「チームを勝たせるのがキャッチャーの仕事なので……どの勝ちもうれしいですが、しびれましたね」 古賀優大、27歳。9年目を迎えた。今季はすでに78試合でマスクをかぶり、投手陣をリード。打っては打率.279という好成績を残している(9月18日現在)。20代後半に入ってようやくブレークしたかに思えるが、昨季はどん底に突き落とされていた。春季キャンプ中、左膝半月板損傷の大ケガ。捕手にとっては大事な部位だ。手術、リハビリ。シーズンをまるまる棒に振ることになりかねなかった。
「僕、本当に野球が好きなんです。でも、あのときばかりは嫌いになりそうで。オープン戦期間中はヤクルトの試合さえ、見たいとは思えませんでした」 本来、自分がいるべき場所なのに、そこに自分はおらず、テレビの前で戦況を見つめるしかない。その状況が耐えられなかったのだろう。それでも、リハビリ期間は無駄ではなかった。
「シーズンに入ってからは、ほぼ全試合を見ました。外から見る野球は勉強になったというか、新しい引き出しを手に入れられたかなと思います」 ヤクルトの試合だけでなく、ほかの球団の捕手の配球も研究した。古賀によれば、捕手のリードにセオリーはなく、
「10人キャッチャーがいれば、10通りのリードがあります」と話す。
「ピンチの場面でどんな配球をするのか、とても勉強になりました。もちろん、自分でも予測しながら見るわけですが、名捕手と言われている方が、想像していなかった組み立てで打ち取ることもあって、それは自分にとって学びになりました。ああ、こういう考え方もあるのかと」 春、夏と毎日のリハビリを欠かさず、帰宅してはテレビを見ながら勉強の日々が続いたが、昨年の9月29日、イースタン・リーグの最終戦で復帰する。
「やっとプレーできるという喜びがありました。試合は常に状況・・・
この続きはプレミアムサービス
登録でご覧になれます。
まずは体験!登録後7日間無料
登録すると、2万本以上のすべての特集・インタビュー・コラムが読み放題となります。
登録済みの方はこちらからログイン