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野球浪漫2026

ソフトバンク・松本晴 溢れ出す向上心「投資したら10倍ぐらいになって返ってきたらいいなと。自己投資をして成長したい」

 

2026年、チームでさらなる飛躍を期待される選手の一人だ。開幕2戦目の3月28日の日本ハム戦(みずほPayPay)に先発登板し、6回を投げ、2失点で勝利投手となった。23年にドラフト5位で入団後、年々進化を続ける4年目の左腕。どんな経験も成長へとつなげる貪欲さを持つ男の経歴をたどる。
文=田尻耕太郎(スポーツライター) 写真=湯浅芳昭、牛島寿人、BBM


転機はプロ2年目の春


 驚異の成長を遂げたのはプロになってからだ。松本晴はソフトバンクにドラフト指名された2022年秋のころ、最速145キロと紹介されていた。あくまで最速値。とどのつまり、アマチュア時代は実際の試合では140キロ台前半がやっとという左腕だった。

「プロに入るまでは技巧派とか球速以上に速く見えるボールとかを評価されていて、自分はそれに納得していました。というより、そのスタイルで抑えるしかないと思うようにしていました。というか、球速を上げようとすること自体が良くないことだと考えていました。余計な力みにつながるんじゃないかと。周りからもそう言われるし」

 松本晴は今季まだプロ4年目。今や別人だ。球速全盛時代においても150キロ台を投げる先発左腕は希少ながら、最速は153キロを記録し、大台を平然と連発してみせる。だが、今の松本晴には納得の二文字はない。ガツガツとまだ上を見る。

 突然変異はプロ2年目の春に起きた。

「一軍オープン戦に登板しましたが結果を残せなくて(3試合登板、防御率15.00)、開幕前にファーム落ちになりました。その後ウエスタン・リーグで2試合に登板したところで右ハムストリングを痛めてしまい、リハビリすることになったんです」

 戦列から約3カ月間も離れることになった。投げるのは当然、走ることすら許されない。何もできない時間が目の前にあった。

「そんな時に考えました。プロ1年目は一軍で3試合に投げて、楽天戦でプロ初先発もしました。だけどまったく通用しなかった」

 リリーフで2戦無失点の投球をした後、ファーム調整を経て臨んだ23年8月27日の楽天戦(当時、楽天モバイル)は3回1/3で5失点しプロ初黒星を喫した。

「あ、俺無理なんや、このストレートじゃ通用しないと感じたんです。球速を上げなきゃいけない。オフには球団派遣という形で(アメリカ・シアトルの施設)ドライブライン・ベースボールに行かせてもらいました。ピッチングのバイオメカニクスにも触れて、何をどうすれば球速は上がるというのも学ぶことはできたんです。実際に2年目のキャンプでは1、2キロ速くなっていました。だけど本当の意味で成果を上げられたわけではなかった。最初にドライブラインに行ったときの自分は、まだ知識がなくて、本質が分かっていなかった。これはもったいない。ケガをして時間がめちゃくちゃできたので、ならば太もも裏の状態が良くなってきたら球速アップにとことん取り組んでやろうと思ったんです」

 その当時の最速は147キロ。復帰が見込まれた6月までに150キロに到達させる。それだけを考えた。

「150キロを出せなかったら命を取られる。極端ですが、それくらいの気持ちで追い込みました。だからあの期間は・・・

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