マウンドに上がるイニングは一定していない。だが、必ず託されるのは試合の行方を左右する場面だ。首脳陣がタフな役割を任せるのは背番号「34」に絶大な信頼があるからこそ。移籍3年目を迎えた右腕。投球スタイルも変化させながら、優勝をつかみ取るために腕を振る。 文=氏原英明 写真=兼村竜介 勝利に導く潤滑油
試合終盤のピンチを迎えると、ブルペンで体を動かしているのは決まって背番号「34」だ。
投球練習は出番の直前だが、それ以前に柔軟やストレッチなどで身体を動かす。今季の指揮官の方針として「厳しい場面は甲斐野で行く」という考えがあるからだ。
信頼のおけるリリーバーは8回のセットアップや9回のクローザーを任されるはずだが、打順や試合の流れによってリリーバーを決める
西口文也監督は窮地になると必ず甲斐野央をマウンドに送っている。
「割り切っているというか役割を全うするという感じですかね。ブルペンの投手はみんないいです。篠原(篠原響)は19歳でえぐい球を投げているし、黒田(黒田将矢)も今年はいいし、祐太さん(中村祐太)も。どんな場面を任されても抑えられるメンバーばかり。だから『俺が』っていうのはあまりないんです。今季に関してはそういう役目で行くからと伝えられているんで、期待してもらっているからにはしっかり応えたい」 甲斐野は淡々とそう話す。信頼の重きが役割なのか、場面なのか。捉え方は人によっては異なるだろう。ただ一方で、常に厳しい場面での登板は相当なメンタルコントロールが必要とされる大変さもある。
「マウンドに上がる前と、上がっているときは厳しい場面とか思わないようにしていて、投げ終わったあとに、えぐいところで投げさせてもらっていたなって。そう思うような状態でいたいんです」 そうして今季は5月28日現在で21試合に投げて1勝2敗13ホールド1セーブ。チームを勝利に導く潤滑油のような役割を全うし、移籍して3年目になる甲斐野は充実の時を迎えている。
人的補償で西武へ移籍
「人的補償ってこんな感じなのか」 ソフトバンク時代、先輩のリリーバーたちが自分の意思とは異なる形で移籍する姿を見てきた。
「田中正義さん(日本ハム)もそうだったんですけど、決まったのが年が明けてから、自主トレが始まるころで、すごく遅かったなっていうことを覚えていて、まさか自分もそうなるとは思ってもみなかったです」 2024年1月・・・
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