自分に自信がなかった。人と話すことさえも得意ではなく、「プロ野球選手になる」と公言することもなかった。それでも、少年は野球だけにはウソをつかずに、真摯に打ち込んできた。そしてつかんだ、プロ野球選手という職業。次は自分が、希望の光になる。 文=石塚隆 写真=榎本郁也、大賀章好 内気だった少年時代
チームの勝利で貢献する以外に、自分がやるべき事、示すべき事とは何なのか。
横浜DeNAベイスターズの内野手である林琢真が自問自答し、導き出した答え──それは“希望”だった。
「プロ野球選手のイメージと言えば、身体が大きくて、がんがんホームランを打つという華やかなイメージがあると思うんですけど、僕は逆で身体が大きいわけでもない。でかいホームランを打てるわけでもないし、それに華々しい経歴があるわけでもない」 身長171cmの林は、謙遜してそう言ったが、次の瞬間、顔を上げ、声を張った。
「だからこそ泥臭くっていうんですかね。雑草魂じゃないけど、身体が小さかったり、自分に自信を持てない子どもたちに、僕が活躍することで勇気を与えられたらと思っているんです。そのためには将来的にショートのレギュラーになることが、一番だと思っています」 こんな自分でもプロの世界で正遊撃手になれる。これは林自身の“希望”でもあり、また、自信がなく悩む野球少年たちに向けての“希望の光”にもなる。
素晴らしい志ですね、と伝えると、林は照れたような笑みを浮かべた。
「いや僕は、そういう目標がないと頑張れないので……」 自分だけではなく、誰かのために懸命に頑張ることのできる人間は、荒波を跳ね返す強さを持っている──。
2000年、愛知県出身。名古屋市から電車で30〜40分ぐらいのところにある東郷町で生まれ育った。父親からの影響で小学校1年生から野球を始めたというが、どんな少年だったのだろうか? そう問うと、林は意外なことを教えてくれた。
「いや、もう人とは遊ばないというか、一人でいるのが好きな子でしたね。極端に言うと、引きこもりというか……」 今でこそ自分のビジョンをしっかりと語り、普通に良好なコミュニケーションをとれる林だけに、その言葉は予想外だった。
「学校が終わると、一番最初に校門を出ていくような生徒でした。当時はコミュニケーションをとるのが好きではなかったし、人前で話すのも嫌いでした。家に帰ってゲームをしているような感じでしたね」 社交的ではなく、一人になれる時間が好きな内向的な少年だった。
「たぶん、自分に自信がなかったんですよ」 他人と接することが苦手だからこそ引っ込み思案になってしまう。本当はこんな自分は好きじゃない、と曖昧模糊(もこ)とした青少年時代を過ごした人もきっと多いのではないだろうか。
モヤモヤとした感情が渦巻く思春期。そんな林の・・・
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