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野球浪漫2026

阪神・工藤泰成 進化の真っただ中「はい上がる気持ちは誰よりもある」

 

筋トレ、秋田、独立リーグというキーワードを阪神の投手に当てはめたとき「石井大智」という名が挙がる。だが、今季は163キロを計測したもう一人の右腕が、阪神の中継ぎをけん引している。1年ごとではなく毎日成長を見せて、リリーフ陣に欠かせない存在になりつつある。だがここまでは順風満帆な野球人生ではなかった。
文=向亮祐(デイリースポーツ) 写真=宮原和也、井沢雄一郎

阪神・工藤泰成[投手]


 地鳴りのような大歓声が充満するグラウンドで、照れくさそうに笑った。右手にウイニングボールを持ち、まばゆいフラッシュを浴びる。7月12日、ヤクルト戦(甲子園)で待望のプロ初勝利を飾った。「まだ夢の中にいるような新鮮な気持ち。早いようで遅かった……。やっと、という感じ」と湧き上がる感情に2024年の軌跡を重ね合わせていた。スポットライトとは無縁のアマチュア時代を経て、育成で入団。昨春に支配下を勝ち取り、2年目の今季はチームに欠かせぬリリーバーへ成長した。しかしこれまでの人生は、順風満帆だったわけではない。一度は好きな野球に終止符を打ちかけた。

 01年11月19日、秋田市の生まれ。3人兄弟の末っ子は「大きく育って欲しい」という願いを込められ「泰成」と名付けられた。父・一範さんは「一番泣き声も大きかったし、買い物に行って、ほしい物があると床に寝そべって手足をバタバタさせて泣きわめく子。やんちゃでした」と懐かしそうに振り返る。

 秋田東小3年時に野球を始めた。捕手、投手、三塁手を兼任しながら、能代一中の軟式野球部ではチーム事情で3年時から投手に専念。しかし部員が少なく、1回戦負けが頻繁にあった。「弱小だったので、熱が冷めた」。引退後はバドミントンに熱中。進学した明桜の面接でも「バドミントン部に入ります」と話したが、一範さんの言葉で翻意。「試合に出られなくてもいいから野球を3年間やってみな」。白球を追いかける情熱は、まだ冷めていなかった。ためらうことなく野球部の門をたたき「憧れはずっとあった」甲子園を目指した。

 高校3年間で聖地の土を踏む夢は実現していない。2年夏は秋田大会決勝で、金足農高の吉田輝星に完封負け。3年夏の決勝では自身が登板して延長11回にサヨナラ負けを喫した。「プロは目指してなかったし、夢だなと。行ける実力もなかったので」。仲間と共有した悔しさを糧に大学進学。そこでウエート・トレーニングと出合った。

 大学2年の冬から本格的に着手。球速もフィジカルの強さもなかったため、何か武器を見つけたかった。大学のトレーナーに筋肥大、瞬発系などのメニューをすべて教わって、実践。毎日約2時間、上半身と下半身に分けながら徹底的に鍛え抜いた。もともと3食だった食事も変化を敢行。おにぎりを2時間おきに頬張りながら一日8合の米を平らげた。

 妥協を許さない自己管理のおかげで、約2カ月で体重は65kgから80kgに増えた。球速も高校3年時で最速142キロだったが、153キロまで上昇。うまく行き過ぎて自分でも驚いた。しかし4年時にプロ志望届を提出するも指名漏れ。「4年のときに少し成績を落とした。指名漏れする覚悟はできていたし、社会人とかも断っていたので、独立リーグしか選択肢がなかった」。指名漏れが決まると一分もたたないうちに父・一範さんに電話を入れて、伝えた。「徳島、行くから」。迷うことなく心を決め、新たな道に飛び込んだ。

肉体強化で精神力も強化


 入団した四国IL/徳島では、同学年で楽天に入団した中込陽翔と出会った。ボディーメークの大会に出場したこともある中込から・・・

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