期待の生え抜きが、ついにレギュラーをつかんだ。7年という時間は「野球エリート」にとって少し長い道のりだったかもしれない。だが、無駄な時間は一切なかった。愚直に野球と向き合う姿勢は、野球少年のころから何一つ変わっていない。 文=田口元義(フリーライター) 写真=井田新輔、BBM 69.5点のスタート
雄弁ではない。それどころか、記者の質問を飄々(ひょうひょう)と受け流すように答えるタイプだが、黒川史陽が発する言葉はいつだって核心をついている。
楽天で7年目を迎える今シーズン。黒川はキャリアで初めて規定打席を満たしながら試合に出ている。世間は彼を不動のレギュラーと認めるが、本人はいたってシンプルに言うのみである。
「毎日、試合に出られるように、自分の全力を出してやっているだけなんで」 黒川は「野球エリート」と呼ばれてきた。だが、現実はどこまでも「全力」を貫き通す、分かりやすいほどひたむきな野球選手なのである。
智弁和歌山高時代からそうだった。
1年夏からスタメンで甲子園デビューを飾るほどの逸材は
「アウトにならないバッティングを意識していた」と言い、卓越したバットコントロールを評価されていた。3年のセンバツ準々決勝で対戦した明石商高のキャッチャーで、のちに楽天でチームメートとなる
水上桂は、この試合で2安打1打点された黒川のバッティングに感嘆していたものだ。
「黒川はストレートが特に強くて、外角の球を左中間にもっていかれましたからね。当時からすごかったです」
高校野球で甲子園に出られるチャンスが春夏合計5回ある中、黒川はすべての大会で名を連ねた。優れた才能に人は「野球エリート」ともてはやすが、本人はもとより、そのことを真っ向から否定するように黒川の歩みを訴えていたのが
中谷仁である。智弁和歌山高の監督は、教え子の本質をこう話していた。
「黒川には“現代風”の根性が備わっていました。自分が『こうだ』と決めた目標に対しては、何が何でもやり通すというか。そういう選手でした」
貫徹する意思が5度の甲子園出場を現実とさせ、高校通算ホームラン34本という結果にもつながった。2019年のドラフトで楽天から2位という高い評価で指名されたのも当然だった。
1年目の春季キャンプ。高卒ルーキーながら一軍メンバーに選ばれた黒川は、目的意識を明確にするように、先輩選手をくまなく注視していた。
「143試合を戦い抜くためのキャンプは、しっかり準備をする期間だと思うんで。『どんな練習をしているのかな?』とか、いろんな選手が気になって見るんですけど、一人ひとり、調整法が違うんだなって思いました」 黒川が入団前の19年・・・
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