一つの出会い、一つの出来事が、その人を作っていく。DeNAの伊勢大夢の場合、その出会いすべてが、プロ野球選手、そして投手へと導かれているかのようだった。先日、球団記録となる148ホールドを挙げた鉄腕リリーバーがプロ野球選手になるまでの物語。 文=石塚隆 写真=川口洋邦、BBM 
DeNA・伊勢大夢[投手]
幼き頃の原風景
野球に心を奪われた瞬間──。
先月、プロ7年目にして球団のホールド記録を更新した横浜DeNAベイスターズの伊勢大夢は、野球に魅了された日のことを教えてくれた。
「小学生の時、Honda熊本に勤めていた父に連れられて、野球部の応援に行ったんですよ。そこで見た光景って言うんですかね。父も含め熱心に自分の会社のチームを応援する人たちの喜怒哀楽のある姿に感化されたというか、こんなすごい応援の中でプレーするのってどんな気持ちなんだろうって思ったんです。これがきっかけで野球をやりたいって」 熊本県熊本市で生まれ育った伊勢は、懐かしそうな表情を浮かべ、そう語った。
伊勢にとって野球の原風景とは、父に手を引かれて知った社会人野球の応援の熱狂だ。企業風土が色濃く出る独特な雰囲気に幼い心は奪われ、いつかそれを背にしてプレーすることを夢見るようになった。応援される選手になりたい。多くの人に喜んでもらいたい。伊勢は、小学校4年生の時に地元の少年野球クラブに入団する。
「入ってすぐに、自分で言うのもアレなんですけど、『俺、うまいな』って思ったんですよ。飛ばす力はあったし、肩も強かった。それまでスイミングやサッカーをやっていたんですけどヘタクソ過ぎて周りからどんどん置いていかれたんです。その経験があったから余計に『ここならスポーツが楽しい』と思うことができたんです」 以来、夢中になって白球を追った。ただ多くの少年たちのように「将来はプロ野球選手!」という夢は伊勢にはなかった。
「やっぱり入口が社会人野球だったんで、憧れはプロというよりも社会人野球だったんです。あの応援される時のすさまじさみたいなものが、自分の中にずっとあって。だから高校を卒業する時は大学じゃなくて社会人野球を希望したぐらいだったんですよ」 プロではなく社会人野球を目指すところに、伊勢の特異性というか、何とも言えないロマンを感じる。しかし運命とは数奇なもので、伊勢はプロの世界へと導かれることになる。
中学時代は部活動で軟式野球に興じた。3年生の時にショートから投手へコンバートされている。
「チームにピッチャーがいなくて、僕は肩が強かったので、やらされたという感じですね。本当はショートが好きだったので、そっちをずっとやっていたかったんですけど……」 そう言うと伊勢は苦笑した。ただこの時、投手に転向していなかったら今の姿はなかったかもしれない。中学時代は、伊勢いわく
「熊本県内ではちょっとは有名だったかもしれませんけど、全国大会には出ていません」といった具合の選手だったという。
そしてスポーツ推薦で九州学院高に入学。九州学院高は伊勢が中学時代に甲子園に出場しており・・・
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