大型補強を敢行し、2014年シーズンに臨んでいるソフトバンク。11年以来のリーグ制覇、日本一奪還は命題だ。そのチームの選手会長に、現在のチームの状況、また自身の打撃について話を聞いた。個性的な感性と創意工夫が好調を支えている。 取材・構成=菊池仁志、写真=井田新輔、湯浅芳昭、田中慎一郎、高塩隆 ※本記事は2014年6月に行われたインタビューになります。 六番・松田
――9年目のシーズンをどのようなものにしたいと思って臨んでいるか教えてください。
松田 まずはチームの勝利のためにプレーすること、個人的には試合に出続けるために結果を出す、この2つを常に考えています。高い意識でプレーできていると思いますよ。打率、打点、ホームランをとにかく稼いでいくことです。あとは高い意識の中で、状況に応じたバッティングをすること。行き当たりばったりのバッティングでは先につながっていかないと思うし、いろいろ考えた中での結果であって、それをどんどん積み上げていきたいと思っています。
――打順は六番が主です。
松田 ランナーがいないときはつなぐ、ランナーがいるときはかえす、大きく分ければこの2つが仕事になりますが、六番という打順はとりわけ、かえすことが主になります。クリーンアップに高い打率、出塁率があるバッターがいますから、当然、ランナーがいる状況で打席に立つケースが多いので、その場面でとにかく集中することです。そうすれば打点も増えるし、チームの勝利につながる。そういった打順だと思っています。
――昨年は四番を打つことが多かったですが、
李大浩選手の加入もあって六番となっています。悔しさはありませんか。
松田 そんなんはまったくないですね。「何番打ちたい」っていうのは若いときの話で、それこそ3、4年目くらいまでは一番とかクリーンアップとかって言っていましたけど、今はどんな打順だっていいです。とにかく試合に出続けるために結果を出し続けることが大切。六番であってもホームランをどんどん打っていいわけですし。そのくらいに打順への意識は変わってきましたね。
――個人のことよりもチームを考える意識が強くなっている。
松田 だからこそ六番だっていいし、六番を全うしようと思えます。六番が機能すれば七、八、九にも良い影響があると思うし、打線ですからつなぐっていう点では六番って大事な打順なんです。単発のホームランを集めてもそんなに怖くないですしね。
――そんな中、今季は勝利につながる効果的な一打が多い印象です。
松田 まあまあまあ。まだまだ納得する部分は少ないんですけど、良い感じになってきていると思います。ただ、波を小さくしていきたいですね。良いときはとことん良いので、悪いときのラインを上げるというか。野手として試合に出る以上は1日1本打つことが最低の仕事です。それすらできない時期もありましたが、それができれば、波も小さくなると思うんですよね。
――波を小さくするカギは?
松田 体力とか技術的なものよりも野球は気持ちの面が大きいスポーツなんです。1打席目に1本出ると2本、3本と続くのは気持ちに余裕が出るからだし、3打席打てずに立つ4打席目のプレッシャーは誰もが持つと思います。その点で、切り替えも大事ですけど、強い気持ちで向かっていくことだと思うようになりましたね。
自信があるから元気が出せる
――6月8日現在で
オリックスに1.5ゲーム差の2位です。
松田 まだまだ勝てていないという印象です。オープン戦やキャンプでやってきたことが出し切れていないのが今の順位に表れています。相手がいることなので簡単なことではないんですけど、勝てるゲームの取りこぼしがありますよね。もどかしい感じがチームにあるのは事実です。みんなもっとできると思っていますし、1位にいて当然のチームなのでまだまだ納得できるものではありません。
――その状況を打破していくには何が必要でしょうか。
松田 とにかく、一人ひとりがチームのことを考えて、やるべきことをしっかりやること。ピッチャーは頑張っているので打たないといけないですよね。そろそろ暑い時季に差し掛かってくるので攻撃陣の頑張りが必要です。
――その打線に
内川聖一選手が不在です。松田選手が背負うものも大きいのではないでしょうか。
松田 そこで必要なのが「やってやろう」という思いですよね。内川さんがいるときは、それにつられて打ちたいと思っていましたけど、いなくなるともっと頑張んないといけない。その気持ちが力みになるし、空回る原因になることもありますけど、やってやろうという気持ちは持ってないと。
――そのような気持ちは毎日の仕草から見て取れます。31歳となった今季も、若手以上に元気ですね。
松田 こればかりは僕がプロ野球で生きていくために必要な手段として持っているものの一つだと思うし、年数を重ねるごとに元気が出てきたとも思うんですよ。それは自信がついてきたから。元気は若い人が出すものと周りの人は見ているかもしれませんが、一軍で結果を出して自信のついた人の方が元気を出してプレーできると思いますね。結果が出ていない若い選手に「若いから声出せ」って要求するのはちょっときつい、かわいそうですよね。そういう段階では自分のプレーに集中して結果を出すのが第一です。それができるようになるまではまだまだ、僕たちがやらないとね。実際、僕が若いときは小久保(裕紀)さんなどが発する言葉はものすごく影響が大きかったんです。1、2年目の僕は「ただ声がでかいだけやなあ」って。
劇打を生む感性

ライナーを打とうとする意識の変化によって、打撃の感覚が良くなっているという
――今季はライナー性の打球がより遠くへ飛んでいます。
松田 意識の変化が大きいですね。この数年はバッティング練習のときから外野フライを打つイメージを持っていたんです。それは、ゴロを意識するとどんなボールにも飛びついてしまうから。外野フライを意識することで打つボールを絞ること、重心を残して打つことが目的としてありました。でも、「外野フライを打つイメージで打って、そのとおり外野フライになってOK」……ん、それでいいんかなと。イメージどおりだけど、凡打でアウトじゃないですか。だから今はライナーを意識。フリーバッティングでスタンドインしてもフライ性の打球はNGです。実際、ライナー性でも十分にスタンドインできますから。
――4月23日の
日本ハム戦(東京ドーム)では5打数5安打2本塁打がありました。
松田 その試合で意識を切り替えたんですよね。それでバックスクリーンの横にもライトスタンドにも届いたんでいいきっかけでした。昔からヒットの延長がスタンドインという感覚は持っていましたから、うまくマッチしました。

5月13日のロッテ戦(QVCマリン)ではプロ野球通算9万5000号の本塁打(2ラン)で挙げた得点で2対0の勝利。効果的な一打でチームを勝利に導いている
――松田選手の打撃を見ていて、グリップがすごく特徴的だと思うのですが。
松田 両手の間をわずかにですが離しています。一軍クラスのピッチャーには目に見えない球の速さがあるんですが、それを1球で仕留めるためです。
――どのような効果があるのでしょうか。
松田 少し空けることでヘッドが立ちやすくなるんです。その意識付けですね。ヘッドが下がると甘い球がファウルになってしまう。追い込まれてのファウルはいいんですが、その前のファウルはただの打ち損じです。打ちにいってとらえ切れなかったということですから。とにかく速い球を1球で仕留めるためにやっていることです。
――珍しいグリップですよね。
松田 立浪さん(和義、元
中日)がそうでしたよね。僕の感覚ですけど、速い球を見たときにちょっと離した方がしっかりとらえられる感じがしたんだと思います。両手を付けるのが普通だと思うんですけど、僕はゲームでピッチャーと対戦する中での空気感で始めたことです。例えば、野球をあまりしたことがない人が160�舛鯊任箸Δ箸靴燭蕁⊂�し空けた方がイメージがわきやすい。それと同じですよ。
――それでは最後に、今後への意気込みを聞かせてください。
松田 リーグ優勝と日本一は絶対。それがチーム全員の目標です。個人としては昨年に続いてのフルイニング出場。1打席1打席をムダにせず集中して臨みたいです。そしてなんとか30本塁打。これまで25本が最高なんで、そこに到達できればいいと思います。
PROFILE まつだ・のぶひろ●1983年5月17日生まれ。滋賀県出身。180cm89kg。右投右打。中京高(2年時までは中京商高)、亜大を経て06年大学・社会人ドラフト希望枠でソフトバンクに入団。1年目の開幕戦に七番・三塁で先発出場。3年目に規定打席に到達し、打率.279の成績を残した。11年、13年にはフルイニング出場を果たし、ともにゴールデングラブ賞を受賞。今季の成績は57試合、打率.288、66安打、12本塁打、37打点、9盗塁(6月8日現在)。