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最後の最後で手を抜きたくない

――今、少しそういうお話が出ましたが、これが自分のゴールなんだとイメージされることはありますか。

山本 ゴールへの滑走路は見えていて、着陸に向けて、もう車輪を出して飛んでいることは間違いないです。ただ、まだ旋回している感じで。あとは着地するだけなんですけど、それが今年になるのか、来年になるのかはわからないんですけども、でもここまでやれたという満足感もありますし、ただここまで頑張ったんだから最後までっていう気持ちも強いですし。最後の最後で、気持ちを抜きたくない。どうせここまで来たんですから、「もう歳だからいいや」っていうふうには、自分ではしたくない。

――ここまでのキャリアのなかで、もうやめようかと思ったことはありますか。

山本 自分からやめたいと思ったことはないですね。でもやめなきゃいけないなと思ったことは何度もあります。そのたびに、周りの方々に引き留めていただいたりして。あと、記録に助けられていますね。球団記録にしても、日本記録にしてもそうなんですが、もうだめだなとなったときに、「もう少し頑張ればここまでいけるんだから、頑張れ」と球団から寛大な言葉をいただいたりして。それを僕は「ありがとうございます」って、ずっと受けてきたんですよね。

 一番は足首を3年前に怪我したときですかね。よくそんななか契約していただいたなと。あのときも「球団記録が、もう少しだから頑張れ」と。「手術して治るなら、もう少し頑張ったらどうだ」と球団のほうから言っていただいて。僕は、「もう引退します」と伝えたんですけど、「杉下茂さんの通算勝利記録(211勝)を超えろよ」って言ってもらえて、実際超えさせてもらえました。本当にありがたい球団に入ったなと思います。ドラゴンズじゃなかったら、僕はこういうふうになってなかったと思います。



――現役を続ける最大のモチベーションは何ですか。

山本 先ほども言いましたけど、ここまで来たからには最後まで手を抜きたくない、そのことだけです。あとは、記録のことがあったりしますけど、やっぱり野球が好きというのが大きいですよね。小学校3年生のときからピッチャーをやってますけど、僕はピッチャーしかしたことがないんですよね。

 そういう意味では、野球部員がそのまま48歳になったみたいな感じがします。モチベーションも何も、だったら小中学生のときは何で野球をやっていたんだということになるじゃないですか。好きで野球部に入ったわけですから。だから、モチベーションに関しては落ちたことがないですね。

あとは、鳥取の小山裕史先生(ワールドウィング代表。初動負荷理論をもとに、各種競技の動作改善、故障改善、コンディショニングなどの実践施設を運営)に会ってからもう18年ぐらいになりますけど、毎年新しいことに取り組んできて、飽きがこないんですね。フォームにしても、変化球にしても。小山先生に会わなければ10年前にやめていたでしょうね。

 そういう意味では本当に周りの人に恵まれているなあと。アイクさんや小山先生に会えたからこそ、今がある。そして、今まで携わってくれた監督やコーチ、裏方さんも含めてみんなが助けてくれたことが本当に大きいですね。そのなかで、期待に応えていこうと自分も頑張ったつもりなんですけど、それがうまくかみ合ったんですね。もう一回それをやれと言われてもできないですね。本当にたまたまのめぐり合わせですから。

――これだけ長く続ける秘訣を教えていただこうかと思ったんですが、そういう出会いの積み重ねなんですね。

山本 はい。人に恵まれたことの積み重ねと、あとは運ですね。もちろん、故障しない体を授かったことで両親にも感謝しなければいけないし。あとは、プロでやれる体を作ってくれた小中高のチーム。何か一つ間違っていたら、全然話が違ったはずなんですけど、肩とヒジはこの歳でも痛くないですし、自分でも奇跡だと思います。奇跡のなかでやっているので、引退が決まったら、きっと「ああ、凄かったな」って。

「すげえ、やったんだな、俺」ってね。終わったときに思うんじゃないかと。そういう意味では、王さんや長嶋さん、野村さんといった先人の方々がいらっしゃいますけど、もしかしたら、プロ野球80年の歴史の中で、僕が一番幸せな選手だったかもしれないですよね。単純に長くできたということで、そういう気がします。

――ベースボールマガジンという雑誌は、昌選手と同年代の40〜50代の読者の方が多いんです。最後に、日々それぞれの仕事で歯を食いしばりながら頑張っている同年代の人たちに何かメッセージをいただけますか。

山本 同年代の方に、僕の姿が励みになりますってよく言っていただけるんですけど、本当にそうなら凄く幸せなことだなと思います。僕が今思うのは、「意外とできるよ」ということなんですよ。「若い頃は何でもできたけど、今はもうできないよ」っていう方がいますけど。そんなことないんですよ。僕も若い頃のようにガンガン走ってガンガン練習することはできないかもしれないですけども、こうやって厳しいキャンプでやれていますし、あきらめないでほしいというのが一番あります。

「もう無理だよ」じゃなくてね。会社で頑張っている人たちには、「自分たちが引っ張るんだ」と思って頑張っていただければ嬉しいなと思いますね。これから10年は僕らの世代の活躍の場じゃないですか。僕も頑張っていますんで。みんなには、「俺はもう歳だからできないよ」とは思わないでほしいなと思いますね。

PROFILE
やまもと・まさ●1965年8月11日、東京都生まれ。神奈川県茅ケ崎市出身。186cm87kg。左投左打。日大藤沢高から、1984年ドラフト5位で中日に入団。88年のアメリカ留学を機に飛躍。同年プロ初勝利。以後はスクリューボールを武器に活躍。93、94、97年に最多勝利、93年に最優秀防御率、94年に沢村賞を獲得。06年9月16日の阪神戦では、史上最年長となるノーヒットノーランを達成。08年には史上24年目となる200勝を記録。現在もあらゆる記録を次々と塗り替えているベテラン左腕。

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