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実は期待値低いバント野球?他6月の気になった記録

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6月のプロ野球は交流戦が話題の中心になるが、パ・リーグが61勝44敗3分けと大きく勝ち越したため、セ・リーグに大きな異変を呼んだ。交流戦前にはセの首位と最下位の差は8.5ゲームであったのが、終わってみると4.5差。そのため、セ・パのペナントレースが再開1日目の6月23日には勝ち越し球団なしの事態も生んだ。また、そのほかにも両リーグの戦いが再開すると、考えさせられることがいくつかあった。

日米球界のバント事情


 6月26日に西武プリンスドームで行われた西武対日本ハム戦で、0対2で迎えた6回裏に西武は先頭バッターの炭谷銀仁朗が二塁打で出塁すると、次の秋山翔吾に送りバントを命じた。

 手堅い日本のプロ野球では当然の策であるが、勢いのある打球が投手前に転がってしまい、炭谷は三塁で封殺。サインを出した田邊徳雄監督は「いつでも打てる保証はない。確実に走者を進めなくてはいけない場面だったので」と采配の理由を説明した。

 日本のプロ野球はバントが大好きである。昨年の日米球界の1試合平均の数(両チーム合計)を比較してみたい(6月末時点)。

[日本]
▼パ・リーグ 432試合 877犠打 2.03
▼セ・リーグ 432試合 751犠打 1.74

[アメリカ]
▼ア・リーグ 1215試合 457犠打 0.38
▼ナ・リーグ 1216試合 886犠打 0.73

 パは2.03犠打、セは1.74犠打である。一方のメジャーのア・リーグは0.38犠打、ナ・リーグは0.73犠打。投手も打席に立つナ・リーグはDH制のア・リーグのほぼ2倍だが、日本では投手は打たないパの方が多くなっている。

 同じDH制のア・リーグが0.38犠打で、パは2.03だから5.34倍となる。日本のプロ野球の犠打への執着度の高さは歴然としている。投手も打つリーグを比較すると、セはナ・リーグの2.38倍だ。

 パの試合では、メジャーの5倍以上のバントが行われているが、それに対する批判はまったくない。私利私欲を除き去る滅私奉公の象徴であるバント戦法は、日本プロ野球の象徴なのである。しかし、そのバント戦法が実は理に合わないとしたらどうだろう。

 アメリカにはアウトカウント別による走者の位置別の得点可能率の統計がある。こうした統計が残念ながら日本にはないので、アメリカの統計の受け売りになってしまうが、無死一塁では0.907点だが、バントで一死二塁とすると、0.720点になる。走者を1つ進めても、アウトカウントが1つ増えることにより、得点の可能性は低くなる(『ザ・ブック・オン・ザ・ブック』ビル・フェブラー著=2005年2月出版による)。

 わざわざアウトを相手に献上して走者を進めても、大きな効果は期待できないということだ。思い切り打たせても25パーセントの確率で安打は期待される上に、凡退したとしてもアウトカウントは変わらない。

 こんな話をいつか阪急、日本ハムの監督で鳴らした上田利治氏としたところ、「監督としてみれば、1つでも本塁に近いところに走者を進めておきたいんだ」と答えられた。強攻策はファンの勝手な遠吠えなのだろうが、それにしても、12球団の監督すべてが同じようにバント策にこだわるのはなぜだろう。

 パが同じDH制のア・リーグの5倍強の犠打を記録しているのは、どうしても納得がいかない。

セーブが記録される条件


6月29日のソフトバンク対西武戦でリリーフとして3イニングを投げた寺原隼人。セーブはつかなかったが、工藤公康監督の大胆な起用法だった


 6月29日の東京ドームでのソフトバンク対西武戦。ソフトバンクが東京の社員福利厚生のためにシーズンで年に一度、東京ドームで行う主催試合である。

 この試合で珍しいシーンが展開された・・・

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プロ野球アナリスト千葉功によるコラム。様々な数値から野球の面白さを解説。

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