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岡田彰布コラム

長いシーズンを活躍する下地はキャンプで培われる。新人が1カ月乗り切る秘訣は眠るが勝ち!や

 

とにかく疲れを残さない。食べて寝る、しかない!


阪神の新人、ドラフト1位の大山も初のキャンプで分からんことばかりやろ/写真=BBM


 ネタ枯れの1月が過ぎ、2月に入った途端、スポーツ新聞は賑やかになったな。やはり動きがあるのがいいわ。「○○いきなりサク越え○発!」とか、「○○、初ブルペンで○球投げた!」とか、派手な見出しが躍ってね。いかにもスポーツ新聞……って感じがするもんな。野球はこうでなきゃ……ってことよ。

 ということで、プロ野球はスプリングキャンプに突入した。1カ月に及ぶキャンプ期間。いかに個々が力を磨き、いかにチームとしての理想を高められるか。長いシーズンの下地を作る重要な時間になる。オレも選手、コーチ、二軍監督、一軍監督として何年もキャンプを経験してきたけど、おろそかにしたらダメな期間ということだけは確か。それを実体験しているわけよ。

「そこでルーキーが初のキャンプに挑む心構えは?というテーマで書いてくれますか」という編集担当からの指令が下った。まあ、時代が違うから、すべてにおいて大きな差異はあるけど、やることは一緒よ。何度も書いてきたけど、あらためてオレが思うキャンプでの新人心構えを記すことにする。

 オレは1980年の2月、プロで初めてのキャンプを経験した。いまから37年も前のことよ。ドラフト1位で入団したし、大きな期待を背負っているという実感はあったな。ところがキャンプ地が恒例の高知県安芸市ではなくアメリカのアリゾナ州テンピというところでの海外キャンプよ。安芸ならファンが多く来てくれて、そこも気になるところなのにアリゾナやから、人の目を気にする必要がない。それはありがたいことやったけど、キャンプが始まると、オレ、思うように調整できなくてね。というのも監督が外国人のブレイザーで、彼にはルーキーに対する独特の考え方があったわけ。いきなり通訳に伝えられたわ。「余程のことがない限り、すぐに起用することはない」とね。こんなん、普通やないわね。でもブレイザーはこれを信念として、ホンマ、頑なやったもんね。オレは内野手で入団しているのに、キャンプ途中から「外野の練習に入れ!」ときた。エッと思ったわ。それなりに自信があったのに、それが崩れ去った。正直、なんで外野の練習やねん……と思った。

 当時、阪神の内野陣は層が厚くってね。三塁は掛布(掛布雅之)さん、遊撃は真弓(真弓明信)さん、一塁は藤田平さんがいて、ほかにも猛者がいっぱいいた。となれば二塁で……ということになりそうなものだが、ブレイザーは極秘で新外国人選手を獲得していた。ヤクルトをやめたヒルトンよ。アリゾナに突然、現われたヒルトンにビックリ。マスコミも大あわてしていたくらい、それは秘密裏で進んでいた話やったわけで、そこから「ブレイザーは岡田を嫌っている……」とかうわさが流れたみたいやった。

 でも、落ち込んだけど、こんなことでヘコたれてる場合やない。やるだけのことはやろう。アピールするしかない、と割り切った。そんな心の内を宿舎のホテルの部屋で北村照文さんと語り合っていたわ。いまのように1人部屋ではない時代。ホテルは2人1部屋。オレは北村さんと同部屋。オレがドラフト1位で、北村さんがドラフト3位。同じ新人で気を遣うこともなかったから、助かった。とにかくキャンプを乗り切るように疲れを残すまいと、オレらは体調維持に必死に努めたわけですわ。

 これをひと言でいえば「眠るが勝ち!」。要するにキャンプでの1日1日で思い切り練習を繰り返し、それが終われば、とにかく睡眠時間を多く取ること。新人は先輩に気を遣い、寝る時間も削られる……という言い伝えがあったけど、そういう中でも、とにかく食べて、寝る。これができれば、長丁場のキャンプは乗り切れる……というのが、オレの実体験。疲れを翌日まで持ちこさない。それができて、いいキャンプ、いい練習ができるということになるわけやからね。

FA選手は自分のペースで練習量のサジ加減は難しい


練習ではたくさん指導され、多くのファンにサインをする。疲れるやろうけど、そこはたくさん寝て、乗り越えてほしいな/写真=BBM


 ルーキーやから、練習はやることなすこと、分からんことばかり。戸惑うな、緊張するな……といっても、これは無理よ。もちろん、周囲の目もある。どういう評価をされているか。気になるわね。ただ、そういうことばかりに気を取られたら、自分を見失う危険性がある。見る人はキッチリと、見てくれている。そういう考えで、キャンプに取り組むべきやと思うのよ。

 それは新人だけではなく、新加入の選手にも言えるわね。阪神でいえば糸井(糸井嘉男)になるのかな。大きな期待を受け、新天地でのスタートを切るわけやから、力むなといっても簡単なことではない。ついついオーバーペースになり、体調を悪くするといった実例が何度あったことか。糸井クラスになると、自分で判断できるはずやし、周りに惑わされることなく、うまく調整してもらいたい……ということだけやね。

 2008年、オレの阪神監督の最終年、FAで入団したのが新井貴浩やったけど、オレは新井に何も要求せんかったわ。それまで敵チームの主軸として対戦していたし、よく分かっていたからね。自分のペース、調整法を守ればいい。とにかくシーズンに入って力を出してくれたらいいわけやから、余計なことは言わんかった。

 それほどキャンプは重要な1カ月よ。ここで故障したり、調整ミスすれば、シーズンに影響するわけやからな。かといって追い込まないキャンプもダメやし、そのサジ加減が難しいのだが、新人には新人の、ベテランにはベテランのキャンプの過ごし方がある。ブレずに1カ月を送ってほしい。長いシーズンを乗り切る下地はここで培つちかわれる。有意義な1カ月……と振り返ることができるように。それだけよね。(デイリースポーツ評論家)

PROFILE
おかだ・あきのぶ●1957年11月25日生まれ。大阪府出身。北陽高では1年夏の甲子園に出場し、早大では東京六大学リーグ歴代1位の打率(.379)と打点(81)をマーク。80年ドラフト1位で阪神に入団。1年目からレギュラーとして新人王を獲得。21年ぶりのリーグ優勝、日本一を達成した85年は五番打者としてベストナイン、ゴールデングラブ賞。94年にオリックスへ移籍し、95年限りで現役引退。通算1639試合、打率.277、247本塁打、836打点。オリックスで2年間指導の後、98年に阪神復帰。二軍監督などを経て、04年から08年まで監督を務め、05年はリーグ優勝に導いた。09年から12年はオリックスの監督として指揮を執り、13年からは野球評論家として精力的に活動している。
岡田彰布のそらそうよ

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選手・監督してプロ野球で大きな輝きを放った岡田彰布の連載コラム。岡田節がプロ野球界に炸裂。

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