
代打のときにレフトスタンドの虎ファンに一礼して打席に入った原口。こういう人間性があるからみんなが復帰を喜び、感動したんやと思う
原口の人間性は聞いていた。だからこそ余計に感動した
現場にはいなかった。でもテレビ画面を通して“感動”は十分に伝わってきた。6月4日、千葉のZOZOマリン。今年の
阪神の交流戦スタートは
ロッテ戦。9回、そこで感動の瞬間が訪れた。
球場のザワつきはなんだ。敵も味方もない。みんながこの時を待っていた。「代打・原口」――。この瞬間、大きな拍手が起きた。
オレが阪神の監督をやめてから入団してきた選手で、直接、話したことはない。それでも気になる若者やった。それが
原口文仁。関係者、マスコミの人から、よく聞かされた。とにかくマジメで、素晴らしい人間性。彼のことを悪く言う人間はいない……。さすが東京の伝統校・帝京高出身である。厳しく育てられたんだろう。しっかりとした“シン”を持っている若者という印象を、オレは彼から受けていた。
ケガもあり育成となって背番号は3ケタ。数年前のキャンプで、その3ケタの背番号が躍動し、が然注目される存在となり、その後は着実な歩みを示してきた。でも今年、自ら明かした大腸ガンの病……。経験がないから軽々しく言えないけど、肉体的、精神的な落ち込みは相当なものやったと思う。
ただ、原口は歩みを止めなかった。手術し、リハビリを続け、再びユニフォームを着るまでにもってきた。この歩みがスゴいのに、6月4日、ついに一軍に戻ってきて、タイムリーを放った。
不屈の闘志というのかな。彼を支えたのは戦う心やったに違いない。負けたくない、支えてくれる人々のためにも、そして何より野球が好きだ。それらの思いが、彼を突き動かしたんやろうね。
野球にはドラマがある。それもシナリオのない本物のドラマよ。たった1本のヒットの裏に秘められたドラマ。まさにこの夜の打球は、野球ならではの人間ドラマやったとオレは今でも感動、感激している。
原口のカムバックは阪神にとって・・・
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