
8月25日の楽天対オリックスの試合を解説。引き分けに終わったけど、オリックスのチーム力が上がっているよ。優勝の確率も高いと思うわ[写真=井沢雄一郎]
中田翔の巨人入り 少し抵抗はあるわな
高校野球はやっぱり素晴らしい。2年ぶりの夏の甲子園。テレビ観戦を続け、球児のひたむきなプレーに心洗われる。そんな甲子園に異変が起きた……とか。ベスト8に進んだうち、近畿勢が5校。これは史上初のことらしい。関西生まれの人間としては、なんか誇らしい気分やけど、もともと近畿は強いんよね。
今大会の特徴と言えば、左の好投手が多いというところか。中でも京都国際高の森下(
森下瑠大)君、二松学舎大付高の秋山(
秋山正雲)君は、ホンマ、投手としてのセンスを感じさせるピッチングやった。これを読んでもらうころには、優勝校は決まっているやろうけど、近畿勢の中から優勝が出るのか。優勝候補と言われた大阪桐蔭高が早々と姿を消したのは意外やったけどね。
その大阪桐蔭高出身の
中田翔やけど、
巨人への無償トレードが決まったのには驚いたわ。シーズンが終わり、オフに移籍が決まるのであれば、ビックリもしないが、無期限謹慎が明らかになって10日間くらいでトレードが決まったんやから、正直、釈然としないわね。
後輩選手への暴行が発覚して処分を受けたわけやけど、昔はこのような行為は当たり前のように行われていた。自主トレ初日、ルーキーがあいさつしないと、ベテラン選手に殴られたとか、いじめられたとか、正直、ニュースにもならなかった。でもいまは時代が違う。コンプライアンスが厳しくなり、こういう行為はハラスメントとして扱われる。だから
日本ハムも厳しく、無期限の謹慎処分を下したわけよ。
それがわずかな日時で、電撃の巨人入りですわ。裏で何があったかは、オレには分からない。ただ選手生命の危機に立った中田翔を助けてやろうと、巨人がそれだけの理由で動いたわけではないやろう。中田翔の力量を判断し、チームにとってプラスになると
ジャッジしたから獲得した。こっちのほうが理由としては大きかったのではないかな。新外国人選手でまかなうはずだった一塁だったが、退団したりして、巨人としては穴になっていた。そこにピタリとハマるパーツが……。そら戦力になるわ。優勝を狙うには大きな補強になるとは思うけど、果たしてどうなんやろね。賛否があるやろうし、あえてオレが監督なら……と聞かれると、「獲りません」となるわ。
そういえば昔、こういう話があったわ。オレが
阪神の監督だった2005年のオフ、メジャーから復帰する
中村紀洋を獲得するかどうかを迫られた。いわゆる大物打者で、本人も阪神入りを希望しているという情報やった。でもオレは即断した。「獲りません。なぜ? ウチには今岡(
今岡誠。現・真訪)がいる。同じようなタイプはいらない。それが理由です」と、その話は幻に終わった。
今回の中田翔のケースは、あのときの中村紀とはまったく違う。ポジション的にもダブるわけでなく、必要とされての交渉やったわけよ。でも無期限の謹慎が、たった10日でゲームに出れる……ってことには、さすがに抵抗感が消えない。
阪神は外国人過多よ。オリは力強くなっている
そんな強化を進めた巨人と優勝を争う阪神だが、ここからは勝ちにこだわった戦いをしていくしかない。もちろん勝負はまだ先。オレは10月がそのときと見ているが、もうすぐ内容より結果が問われるときが来る。これまで選手任せというか、チームの流れの中で戦ってきたが、ここからはベンチワークが重要になってくるのだ。
そこでいまスポーツ新聞で伝えられるのが“外国人の起用法について”である。好調の選手が多くて、どう対処していくかが注目されているのだが、これを記事では「うれしい誤算」と報道している。でも、こんな誤算を生むようなことを、最初からせんかったらエエのに……と、オレは考えている。そもそも、悩むくらい外国人を抱える必要はないやろ。高いお金を使って、悩みを増やすって、これ、どうですか。なんか矛盾していませんか、ってなるのだが、いまさら言っても仕方ない。マルテ(
ジェフリー・マルテ)、
サンズ、
ロハス・ジュニアのバッターに、
スアレス(ロベルト・スアレス)、
ガンケル、
アルカンタラの投手陣。打者はポジションがかぶるわけで、誰かが代打に回り、投手ではスアレスは絶対に外せないわけだから、ローテーションの巡りで、外国人枠をうまく活用していくしかないだろう。こういう判断もベンチワークに含まれるわけで、矢野(
矢野燿大)監督も頭を悩ましながら、対応していくだろう。
そうそう、このコラムを書いているのは仙台のホテル。8月25日、楽天対オリックス戦でテレビ解説の仕事があって仙台にいたのだが、さすがに優勝争いしている両チーム。緊迫したいいゲームだった。結局は引き分けに終わったのだが、楽天の早川(
早川隆久)、オリックスの田嶋(
田嶋大樹)と、この左腕対決も見どころがあった。
久しぶりにオリックスのゲームを生で見たけど、首位に立つだけのことはある。こういった僅差のゲームもしっかりとできるし、これまでなら、ミスで自滅するところが、なかなかスキのない中身を示していた。これを自信というのかな。ゲームを重ね、勝つことで自信を深め、それをチーム力に変えていっている。ホンマ、力強くなっている……と実感したし、優勝の確率は日ごと、高まっているな、という印象やね。これでセ・リーグが阪神となれば、夢の関西ダービーよ。そんな夢を見させてくれる秋にしてもらいたいものです。(デイリースポーツ評論家)
PROFILE 岡田彰布/おかだ・あきのぶ●1957年11月25日生まれ。大阪府出身。北陽高では1年夏の甲子園に出場し、早大では東京六大学リーグ歴代1位の打率(.379)と打点(81)をマーク。80年ドラフト1位で阪神に入団。1年目からレギュラーとして新人王を獲得。21年ぶりのリーグ優勝、日本一を達成した85年は五番打者としてベストナイン、ゴールデングラブ賞。94年にオリックスへ移籍し、95年限りで現役引退。通算1639試合、打率.277、247本塁打、836打点。オリックスで2年間指導の後、98年に阪神復帰。二軍監督などを経て、04年から08年まで監督を務め、05年はリーグ優勝に導いた。09年から12年はオリックスの監督として指揮を執り、13年からは野球解説者として精力的に活動している。