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岡田彰布コラム

岡田彰布コラム「球宴は多くの阪神ナインが出る。楽しんで、勉強の場にしてほしい。後半戦は、1点でも多く取り1点でも少なく守り切るのみよ」

 

6月に入り、勝ち星に恵まれない状況が続いた。その中で一番を打つ近本光司の骨折離脱など、不運も重なった。阪神から多くのファン投票で選ばれた選手たちがオールスターに出場する。そこで何かを得て後半戦に備えてほしい。そして迎える勝負の後半戦を、岡田彰布監督はどう考えているのだろうか。
写真=BBM

ここまでのチームの評価は「まずまず、普通」。貯金を大きく減らすこともなく、来ているのは大きいよ


オレのプチ自慢から


 週刊ベースボールの読者の皆さん、1カ月のご無沙汰です。阪神タイガース監督の岡田彰布です。月に1度の「そらそうよ」ですが、これを書いているのが7月14日の深夜です。前日(13日)のDeNAとのゲーム、打線がうまく機能せずに完封負けでした。それでも3連戦は2勝1敗で勝ち越し。それはそれでよかったと思っています。

 このコラムを皆さんに読んでもらっているのは7月の20日くらいか。そうそう、今から43年も前の7月19日のことを思い出すよ。オールスターの思い出。1980年の球宴、オレはルーキーでファン投票で選ばれた。シーズンの最初、出場機会が少なかったけど、5月から先発出場が増え、そのタイミングでオールスターのファン投票がスタート。ファンの皆さんの後押しもあり、選ばれたのですが、あのときは阪神から多くの先輩も出場。王(王貞治)さん、野村(野村克也)さんの最後のオールスターとなり、江川(江川卓)さん、木田(木田勇)さんらとともに、オレも初出場となった。

 ここでプチ自慢を……。時は7月19日。舞台は西宮球場でした。セ・リーグのベンチで采配するのが古葉(古葉竹識)監督で、セの先発、小林繁さんが3回を投げ終えた4回表。走者が2人たまったところで、古葉さんから「行くぞ!」の声が掛かった。小林さんの代打が、オレの球宴初打席やった。

 マウンドには間柴(間柴茂有)さん。日本ハムでこの年、初の2ケタ10勝を挙げたサウスポーやった。もう43年も前のことで、カウント、どんな球やったかは、覚えていないけど、バットに当たった感触はしっかりと覚えている。

 うまく打ったと思う。打球はセンターの左。バックスクリーンの左に吸い込まれていった。初打席で初ホームラン。それも3ラン。結局、全セが1点差で勝ち、オレはいきなりMVPに選ばれたわけです。

 やはりオールスターは特別な舞台やし、その中で打てたこと。これはのちのち、大きな自信にもなったし、自分のプロ人生で大きなプラスになった。

新人で出たオールスターで代打本塁打を放ったオレ。あれで自信もついたよ


 そういう意味を含めて、今年のオールスターです。阪神から多くの選手がファン投票で選ばれた。これはタイミングもよかったんやと思う。ファン投票が始まったころ、チームがホンマ、エエ状態で勝ちを重ねていけた。これがファン投票に反映したのでは……と分析するけど、まあ、これだけ支持されたわけです。期待に応えるようなオールスターにしたいと思うよね。

 ケガ、故障で出場辞退もあるけど、出場する選手は堂々と投げて、打って、守ってもらいたい。そら、この期間、少しの休息が欲しいけど、それ以上に、ここで得る自信や経験が大事になるわけで、若い選手には、楽しんで、そして勉強の場にしてほしいと願っているのです。

まずまず、の普通やな


 ペナントレースはすでに半分以上を消化しているけど、まあ、オールスターが折り返しというイメージはいまもある。球宴後から後半戦。いよいよ「勝負の時」を迎えるのですが、ここまでを振り返り、オレなりの手応えとしては「まずまず、普通」というのが正直なところです。5月はホンマ、貯金を多くたたき出したけど、そら、そうはうまくは行きません。交流戦の6月、チーム状態としては底に近い感じやったし、これは苦しいと覚悟した。ただ、大きく負け越したわけでもなく、傷を最小限に食い止めた。これが大きかったと考えている。

 あの5月の勢いをずっと保てるほど、野球は甘くはない。あんな状態が続けば、ホンマ、楽なものですわ。それが続かず、波が訪れるのが勝負であり、野球。そんなこと、わきまえているから、オレは周囲が考えるほど、悲観的になっていなかった。

 要するに「普通に」戦えばいいわけで……。この普通に戦うことが難しいのだが、基本に忠実にプレーして、それを実践できれば、結果はついてくる。7月までは、それでいいという考えです。

 しかし、いよいよ8月を迎える。勝負は9月、そして10月と先を見据えているけど、今年の8月はかなり重要な1カ月になると考えている。2ケタの貯金を保ち、これを減らさず、少しでもいいから積み上げていく。これが8月の当面の目標設定になるけど、チームとして甲子園を明け渡し、長期ロードに出る。昔はご存じのとおり「死のロード」なんて呼ばれたけど、それはもう死語。長期ロードも快適に過ごせる。でも、やはり特別な暑さは応える。

8月はドーム球場が多いから


 そこで日程を見てもらいたい。8月はドーム球場で5カードとなっている。これは大きい。移動があって、屋外球場で試合が続くと、これは相当、肉体的にきつい。なにせ、この暑さよ。疲労がたまり、動きに影響するのは当然です。それがこの8月、多くのドーム球場でのゲームが組まれていることで、緩和できるはず。8月は、そういうところでの戦いになってくると見ている。

 ここまで戦ってきて、先にも書いたが貯金を2ケタ。これをキープできている。一時は貯金が20に届くか、という時期もあったけど、そうはうまくはいかない。いかなくても、2ケタの貯金をキープできているのだから、うまく運べているという判断でいいと思う。

 問題は8月を乗り切り、勝負の9月、そして10月で、どれだけ貯金を増やせるか。そのためのキーになるのは? やはり何度も言っているように「ブルペン」やとオレは考えている。いかに阪神らしいゲーム展開に持っていけるか。相手より多く得点し、それを投手陣で守り、逃げ切る。先行逃げ切り。この形を築くためにも、ここからはブルペン勝負! これは間違いない。

中継ぎの連投は避けるよ


投手陣のやりくりは、安藤[中央]と久保田[左]の両投手コーチと話し合いながら決めているよ。連投はさせないようにしているわ


 そのことも含め、今回、シーズン途中ではあるけど、新外国人投手を獲得する方向で動いている。球団が先を見て、動いたのだが、オレ自身、多くは望まないように、あえてしている。あくまでゼロベースというのか、起用してみて、プラスになってくれれば、という程度に考えていたほうがいい。いきなり計算に入れて、それが外れたら、やっぱりガクッとくるからね。

 そこよりも、勝ちパターンを長く保てるかどうか。オレはそこに注力する。クローザーに考えていた湯浅(湯浅京己)が、まだ戻ってこない。となれば経験豊かな岩崎(岩崎優)がそこに入り、今後もそのポジションを担ってくれなければならない。だから、彼のコンディションを考え、極力、無理をさせないこと。これが大事になる。昔なら何連投とかは、多くあったけど、いまはそういう時代ではない。なるべく長い連投は避け、起用する。

 これはセットアッパーにも言えることで、岩貞(岩貞祐太)がそのケースに当てはまる。一度は体の状態が悪く、二軍で調整したが、その後、一軍に復帰してからは、ホンマ、素晴らしいピッチングを続けてくれている。そんな岩貞も連投はなるべくさせないように、投手コーチと打ち合わせている。岩貞から岩崎。これが現状のウチの勝ちパターン。ここを崩すことのないような方策。これが勝負の時にモノをいうはずだと信じている。

 この2人につなぐまでがもちろん大事で、先発投手ができる限り、長いイニングを投げ、そこから継投に入るが、ここにきて上向きの投手が出てきたことが分かった。浜地(浜地真澄)に石井(石井大智)、それに及川(及川雅貴)、馬場(馬場皐輔)と僅差のゲーム、わずかな負け展開で、しのげるスタッフが充実してきたことも、この先のプラス材料と言える。

近本が帰ってくるまで……


近本が帰ってくるまでは、いろいろとやりくりしていくよ。後半戦、死のロードと言われる8月はドームでの試合が多いのがいい流れになってくれると信じてるわ


 さて、次は攻撃力だが、ここは大きな痛手があった。近本(近本光司)の離脱よ。監督として主力に起きる故障、ケガが最も怖い。それ以上に本人の思いというのかな。悔しいだろうし、つらいと思う。近本には、そら早く治して復帰してほしいけど、それよりも完全な状態にすること。無理はさせないし、ベストの形でまた一番に……。それまではなんとか、するしかない。

 そこで起用したのが森下(森下翔太)だが、先のDeNA戦ではホームランにサヨナラ犠牲フライと、働いてくれた。まだまだ力的にもろいところはあるけど、積極的に振っていき、フルスイングできる。かわされたり、抜かれたりすると、これに対応できないところもあるけど、これも経験よ。前川(前川右京)と森下、若い2人はこれからも積極的に起用していくことになる。

 先月のこのコラムで、後半戦のカギを握るバッターとして挙げたのが佐藤輝明やった。これはいまも変わらないけど、正直、上向く兆しは見えないままである。課題は多くある。インコースの対応、外に逃げる変化球の対処、いまもボールに差し込まれるケースが多い。

 トラ番に聞かれた。「佐藤輝の起用法は?」とね。オレは「このまま終わるか、そうでないか」という答え方をした。きつい言い方かもしれないが、正直、そこまでの状態であるということなんよ。彼が結果を残せば、得点能力は上がり、そうでない場合は、攻撃において苦しい展開が続く。だから、こちらも考える。何かキッカケがあれば……と、周囲は簡単に言うが、それを生むのも厳しい状態なのだ。要するにあとは本人次第。そして、すべては結果よ。プロとして結果を出せるかどうか。チームとしてどこまで待てるか。そういうところまで来ているのは間違いない。

キーマンは変わらず佐藤輝やけどね……。なかなか上向く兆しが見えない。そこはまあ起用法も考えなといけないよな


 オレ自身、いまは順位のことは頭にない。そういうもんだ。いまからは順位が上がった、下がったと一喜一憂する時期ではない。要はいかに日々、自分たちの野球ができるか。1点でも多く取り、1点でも少なく守り切るか。だから奇をてらったことなど、する気はない。地に足を着けた戦い。先に書いたように、それが普通にできるチームになることが重要だと、オレは信じている。「アレ」するのはホンマ、簡単ではない。過去の監督生活でそれを経験している。苦しい8月を乗り越え、勝負の9月、そして10月に勝ち切ってこそ、その先に「アレ」が待っている。1カ月後、どんな形でこのコラムを読んでもらえるのか。ファンの皆さん、楽しみにしておいてください。(阪神タイガース監督)

PROFILE
岡田彰布/おかだ・あきのぶ●1957年11月25日生まれ。大阪府出身。北陽高では1年夏の甲子園に出場し、早大では東京六大学リーグ歴代1位の打率(.379)と打点(81)をマーク。80年ドラフト1位で阪神に入団。1年目からレギュラーとして新人王を獲得。21年ぶりのリーグ優勝、日本一を達成した85年は五番打者としてベストナイン、ゴールデン・グラブ賞。94年にオリックスへ移籍し、95年限りで現役引退。通算1639試合、打率.277、247本塁打、836打点。オリックスで2年間指導の後、98年に阪神復帰。二軍監督などを経て、04年から08年まで監督を務め、05年はリーグ優勝に導いた。10年から12年はオリックスの監督として指揮を執った。22年秋に15年ぶりに阪神の監督に復帰した。
岡田彰布のそらそうよ

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選手・監督してプロ野球で大きな輝きを放った岡田彰布の連載コラム。岡田節がプロ野球界に炸裂。

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