
10連勝のあと1敗を喫した高橋遥人。7月14日の中日戦[バンテリン]の7回の気迫の投球は2003、05年の井川を思い出したよ[写真=井沢雄一郎]
高橋遥人の投球内容に井川慶の姿が見えたよ
暑い、ホンマに暑い。夏本番って感じになってきた。そんなときの連戦、これはつらいし、逆に勝負所になる。
阪神もオールスター前の9連戦に入った。その最初のシリーズが名古屋での中日3連戦。オレは解説の仕事があり、名古屋に入った。
7月14日の第1戦。先発は高橋遥人やった。ここまで10勝。負けはひとつで、まさにエースの投球を続けていた。そしてこの夜も8回まで投げた。この姿を見て、オレは井川を思い出していた。2003年、05年優勝の立役者で、井川の何がすごかったかと言えば投げたイニング数にある。
200イニング近くを軽く超えてくるのだから、そらベンチも安心していた。高橋遥に井川の姿がダブり、特に7回やったけど、ギアを一段上げたピッチングが圧巻やった。ここが勝負……と感じたんやろな。力を込めた投球は守っている野手にも伝わるもので、これによって信頼感が生まれるのよ。
シーズンの半分以上を消化して、これからのポイントは? って聞かれることが多い。オレは即答するわ。「ハイ、投手力や」とね。極端に言えば打力が3、投手力は7。それくらいの割合で、戦い方が決まってくるのよ。
そら毎試合、必ず3点、4点が入るなら、楽やけど、攻撃力は正味、計算できない。もっと言えば、オレは監督時代、点は取れないもの……とさえ考えていたわ。逆なのが投手力よ。これは計算できる。そういうスタッフがそろえば、必ず勝ちにつながる戦いができる。そう信じてシーズンを戦ってきたね。
これらのことで優勝争いのトップに立つのが阪神。こうなるわけよ。高橋遥、才木(
才木浩人)、村上(
村上頌樹)と先発3本柱がいてる。連勝はあっても連敗はない。そういう陣容はほかのチームにはない。ただ、ここにきて「?」と感じるところが出てきたのよね。それがブルペンの変化なのだが、昨年までフルで投げてきた名前がないのだ。石井(
石井大智)に桐敷(
桐敷拓馬)、そして及川(
及川雅貴)……。石井は故障だから仕方ないけど、あとの2人はどうしたんやろ。オレ的にはそんなに悪くないと思うけど、結果が出なかったからね。
となればベンチは考える。変わる人材をつくるしかない。そこで出てきたのが工藤(
工藤泰成)、木下(
木下里都)というパワー系投手よ。この2人、平気で160キロのストレートを投げる。工藤にいたっては163キロまで記録した。これは大きな武器だ。だけど、野球は難しい。果たしてスピードだけで抑え切ることができるか。
打線は森下、佐藤輝を支える五番、六番がポイントになるよ
後半戦、藤川監督はいろいろと試しながら戦っていくだろうけど、ブルペンの出来がカギになることを最も分かっているやろう。それが新外国人の左のセットアッパー、
セベリーノの獲得につながったと言えるわな。

中継ぎ陣がなかなか決まらない中でセベリーノを獲得。いきなり158キロを計測するなど、頼れそうな存在になりそうだ[写真=榎本郁也]
7月15日の中日戦2戦目。今朝丸(
今朝丸裕喜)が先発したけど、やはり一軍の壁は厚かったか。こういったテストというのかな、新しい力を発掘しながら戦っていくわけで、オレは総合的なチームの地力でいけば阪神がNo.1だと信じているし、どうやら阪神が抜けていきそうな気配がしてきた。これが「普通」なんよ。
最後に打線について触れておきたい。三番・森下(
森下翔太)、四番・佐藤(
佐藤輝明)と2人のバッティングは強烈なままきている。だが得点源はここだけ。ほかの野手が2人を助けてやらんと。そういう意味では近本(
近本光司)が戻ってきたのは大きい。近本、中野(
中野拓夢)を起点に、これからのポイントは五番、六番の打撃……とオレは見ている。森下、佐藤輝の負担を和らげるように。これは必須やと思うね。(阪神タイガースオーナー付顧問)

やはりこの男の復帰は打線にとって大きいよ。クリーンアップをサポートするためにも近本は欠かせないよ[写真=榎本郁也]
PROFILE 岡田彰布/おかだ・あきのぶ●1957年11月25日生まれ。大阪府出身。北陽高では1年夏の甲子園に出場し、早大では東京六大学リーグ歴代1位の打率(.379)と打点(81)をマーク。80年ドラフト1位で阪神に入団。1年目からレギュラーとして新人王を獲得。21年ぶりのリーグ優勝、日本一を達成した85年は五番打者としてベストナイン、ゴールデン・グラブ賞。94年に
オリックスへ移籍し、95年限りで現役引退。通算1639試合、打率.277、247本塁打、836打点。オリックスで2年間指導の後、98年に阪神復帰。二軍監督などを経て、04年から08年まで監督を務め、05年はリーグ優勝に導いた。10年から12年はオリックス監督。22年秋に15年ぶりに阪神の監督に復帰。23年は18年ぶりにリーグ優勝&38年ぶり2度目の日本一に導いた。24年は惜しくもリーグ2位で終わり、契約満了で退任。オーナー付顧問に就任した。