中村悠平に内山壮真。好捕手がそろうヤクルトで唯一の左打ち捕手である。シュアな打撃に加えてスピードもある。打って走れる司令塔は貴重な存在だ。育成入団2年目の今季5月24日、一つの目標である支配下契約をつかんだ。背番号は「023」から「93」へ。一軍舞台での活躍が次なる目標だ。 取材・構成=小林篤 写真=川口洋邦 入団1年目の昨季はイースタン70試合に出場。199打席で53安打、打率.282とバットで結果を残した。守備では捕手登録ながら外野を担うこともある。今春のキャンプは育成契約ながら一軍に抜てきされるなど、首脳陣の期待は大きかった。自らの手でつかんだ支配下契約。ポテンシャルは底知れず、さらなる飛躍が楽しみだ。 ──今季も2カ月が経過しました。ここまで打撃面の手応えはどうですか。
橋本 やりたいことをしっかりできているなと思います。去年少なかった長打を増やそうとしていて、うまくいったりいかなかったりの繰り返しですが、長打は増えているので、手応えはあります。
──長打を増やしたいと思ったきっかけは。
橋本 去年の長打はほとんどが逆方向だったんです。なので今年は速球を引っ張って長打にすることを目標に、課題に挙げて今は取り組んでいます。
──1年目の昨季は長打を打ちたいと思いながらも打てなかったのか、それとも長打を重視していなかったのでしょうか。
橋本 去年は確実性を重視していました。宮出(
宮出隆自)コーチと話をして取り組んでいたんですけど、秋のフェ
ニックス・リーグから長打を増やしていく方向に変えたんです。
──長打力アップのために変えた部分はありますか。
橋本 打撃フォームの変化は特にないのですが、速球を引っ張るために準備を早くする、振り遅れないようにすることですね。あとはバットの出し方も最短距離にする意識もあります。
──最短距離で出すことにどういった狙いがあるのでしょうか。
橋本 センターから逆方向に打つときはバットをボールの軌道に乗せるためにも、後ろを少し大きく振るのですが、速い球をライトに引っ張ろうと思えば、その軌道では詰まってしまい、間に合わない。映像で見れば最短距離ではないんですが、意識は最短距離で出すようにしています。また、手を早く出すといいますか、前足(右足)が着地する前に手が始動するぐらいの意識を持っています。
──打撃で課題を挙げるとするならば、どこがポイントになりますか。
橋本 引っ張り方向に長打を狙いにいくときの確実性がまだまだなのと、2ストライクからのアプローチです。去年より長打を狙いにいく以上、三振が増えるのは仕方ないことだと思っていますが、2ストライクからの見極めは課題です。

一番の武器である打撃は長打力アップに取り組むなどさらに磨きをかけている
武器を増やしていく
──捕手の話に移りましょう。1年目の昨季の経験はどう振り返りますか。
橋本 去年はプロに入って、新しく球を受ける投手が多くて苦労しました。相手バッターの情報も分からない、真っ白な状態で試合に臨んで、点をよく取られました。日々勉強という時間でしたね。ケガもあってスローイングも安定しなかった。苦しい時期が多かったですね。
──試合に出られない時間もあったかと思います。
橋本 夏場に2カ月ほど試合に出られませんでした。ただ、その時期に衣川(
衣川篤史、二軍バッテリー)コーチに配球の勉強をさせていただいたのは自分にとってすごく良い時間でもありました。
──衣川コーチから口酸っぱく言われているアドバイスは何でしょうか。
橋本 「準備を怠らない」ことをずっと言われています。対戦相手の映像を見たり、投手の状態を把握したり。しっかり準備して試合に臨むようには毎日言われています。
──守備では捕手と並行して外野も守る機会があります。「外野手・橋本星哉」を自身でどう見ていますか。
橋本 外野を本格的に始めたのはプロに入ってからなので、捕球やスローイングにつながる動きもキャッチャーとは違って難しいです。でもコーチに教えてもらって毎日発見がありますし、日々上達しているのは感じます。
──出場できるならどのポジションでもいいのか、やはり捕手としてのこだわりがあるのか。その思いはどうですか。
橋本 優先順位としては、どこでもいいので一軍で出たい。バッティングを生かして出たい思いはあります。キャッチャーができて外野もできれば起用の幅も広がりますし、チャンスも増えると思うので。もちろんキャッチャーの技術もまだまだ上げないといけません。
──春季キャンプは一軍で約2週間過ごしました。貴重な経験になったかと思います。
橋本 古田(
古田敦也)さんや、真中(
真中満、ともに元ヤクルト)さんが臨時コーチで来ていただいて、指導もしてもらってなかなか経験できない時間を過ごせました。バッティングなら一軍でも通用するんじゃないかという自信がついたりもしました。あとは先ほど準備という話をしましたが、村上(
村上宗隆)さんだったり、青木(
青木宣親)さんが、練習に入る前の準備する姿を見ることもできました。すごくいい時間だったなと思います。
──一軍の春季キャンプで差があるな、まだ足りないなと思った部分は。
橋本 守備の面では、中村(中村悠平)さんのスローイングや、壮真(内山壮真)の捕球してからの送球までの速さは、一緒にやっていて差を感じました。「自分はまだまだだな」って。あとは走塁など、細かいことを一軍キャンプの選手は突き詰めてやられていた。勉強することばかりでしたし、毎日新しい発見があって、すごくいい時間でした。
──正捕手・中村悠平選手と過ごす日々は刺激になったと思います。
橋本 アドバイスをいただくこともあったんですが、スローイングがずっと同じリズムで投げられているのがすごいなと感じました。また、ピッチャーとの信頼関係も築かれている。見習わないといけないことはたくさんありました。
──支配下契約をつかみました。この先どこをよりアピールしていきたいですか。
橋本 バッティングで広角に打つ技術、柔らかい打撃は自分の武器なので、そこはしっかり見せていきたいです。また、今年は走塁も意識を高く持って取り組んできているので、もう一つの武器として身に付けていければなと思います。
──盗塁はすでに6個記録しています。
橋本 盗塁が得意というよりは加速するのが得意なんです。スタートがあまり得意ではなくて……。でも隙があれば、盗塁を試みようと今年は思っています。
──打って走って守れるキャッチャーは大きな魅力だと思います。
橋本 そうですね。そこを目指してやっていきたいなと思っています。
アレコレQ&A
Q. ココに注目! 誰にも負けない強みは? A. 大学1年ごろからウエート・トレーニングにハマって、ずっとやっています。気持ちいいとまではいかないですが、やらないと寝られないぐらいです。自信があるのはスクワットと腹筋。スクワットは重たい重量で少ない回数をこなすのを意識しています。
Q. 性格を一言で表すと? A.マイペース 人を待たせるとかはないですが、ゆっくりしてるように見えるらしく、小さいころからよく言われますね。いいように言えば、堂々としているのかなと。プレッシャーを楽しめるタイプだとは思っています。
Q. 休みの日の過ごし方は? A.寝てばっかりです 起きたら夕方になっていることもよくあります。寝具のこだわりは特にないんですが、寮のマットレスの寝心地がすごく良いんです。子どものころは物音がするだけで起きてしまうことも多く、寝られないことも多かったのですが……。
Q. あこがれた野球選手は? A.イチロー選手 同じ左打者というのもあってずっと好きでした。もともと右打ちでしたが、小学校入学前ごろにおじいちゃんに左打ちにしてもらいました。捕手なら
城島健司さん(元
ソフトバンクほか)、
阿部慎之助さん(現
巨人監督)にあこがれていましたね。
<周囲の声>衣川篤史(二軍バッテリーコーチ)から見た期待感と可能性

衣川篤史
「去年に比べるとキャッチャーらしくなってきました。まだまだ鍛えることは多いですが、リードやキャッチング、ブロッキングは段階を踏んですごく成長が見えます。課題である送球面を克服できれば一軍の舞台でも活躍できるのではないでしょうか。他球団を見ても、打撃に期待があって足も速い捕手はなかなかいません。特に左打ちの捕手はチームで唯一ですからチャンスもあるのでは。常に一生懸命な選手なので、今回の支配下昇格も本人の努力でつかんだもの。ここで満足せずに、神宮球場や家族がいる出身地の関西で活躍する姿を見せて恩返しをしてくれたらいいですね」
【2024年イースタン打撃成績】(6月10日時点) 46試合、打率.274、37安打、2本塁打、14打点、7盗塁
PROFILE はしもと・せいや●2000年9月18日生まれ。178cm85kg。右投左打。兵庫県出身。興国高-中央学院大-ヤクルト23育[1]、24途=1年。