グラウンドでプレーする選手たちが最大のパフォーマンスを発揮しチームを勝利に導くために、プロ野球チームには多くの人が携わっている。そんなスタッフの仕事に迫る新連載がスタート。第1回ではデータを活用し選手のパフォーマンス向上、ケガ予防などをサポートする日本ハムのスポーツサイエンティスト・井尻哲也氏に話を聞いた。 取材・文=佐野知香 
井尻哲也[日本ハム]
競技者から研究職へ
スポーツサイエンティストとはデータを計測、集計、評価し、選手のパフォーマンス向上やケガの予防などをサポートしていく仕事だ。2021年から日本ハムのスポーツサイエンティストとして日々、チームの勝利を追求している井尻哲也氏は、以前は東大大学院総合文化研究科助教としてスポーツ科学、認知行動科学の研究を行っていた。
茨城県出身の井尻氏は、東京六大学野球リーグにあこがれ、土浦一高から東大理科II類に進学。内野手として野球部でプレーし、4年時は主将を務めた。
子どものころから解剖学やトレーニングの原理、運動の原理などに興味があり、運動の熟達に関わる仕事をしたいという漠然とした思いを抱いていた。大学時代には東大球場を訪れたOBの、元日本ハム左腕・
遠藤良平氏(日本ハムGM補佐)にもその思いを伝えていたという。
しかし、大学では思っていたような競技力の向上にはいたらず、また肩肘のケガで満足にプレーできなかったこともあり、東大大学院の修士課程ではスポーツドクターである渡會公治先生の指導の下、投球障害発生の機序を学んだ。
井尻氏が博士課程で研究の対象として選んだのが「視覚認知」だ。例えば野球のバッティングならば、投手がボールを投げてから短時間の中で、ボールがいつ、どこに来るのかを予測し、それに合わせてバットを出す。それがズレていたら、わずかな修正を行う。そうした難しい動作をなぜ人間は達成できるのかといった研究だ。その分野の研究者が国内には多くいない状況で・・・
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