野球を仕事にできる幸せをかみしめる。ブルペン捕手として技術向上に悩みながらも、自分と向き合い続けるのは、投手の本気度を肌で感じるからこそ。育成選手としての4年間で支配下に昇格することはできなったが、チームの戦力として汗を流す中で築く信頼関係──。“仕事の本質”は職種を問わない。 取材・文=鶴田成秀 捕球技術の奥深さ
貪欲な姿勢と熱量を肌で感じてきたからこそ、自らの“在るべき姿”を忘れない。再確認させられたのは、数年前のビジターでの試合後のことだ。試合終了後から数時間は選手がウエート・ルームを使用することが多いため、遅い時間に足を運んだ。
「特にやることもなくて、『ウエートでもやるか』と軽い気持ちで行ったんです。この時間なら、誰もいないだろうなって」
時刻は深夜0時を過ぎたころ。人知れず汗を流していたのは、当時のエース・
山本由伸(現ドジャース)だった。
「投手としての能力の高さは、僕が言わずとして知られていること。でも、由伸さんのすごさって、試合前も、ただの調整ではないというか。常に『もっとこうしたほうが』と考える。探求心がすごい。目の前の試合に向けては当然で、次以降の登板にも目を向けているんです」
日々ブルペンで受けるボールは、登板に向けた調整に加え、鍛錬の成果を示す場所。「“
ボス”とか“ボフッ”という音で捕っていたら、ピッチャーが悪く見られてしまう」と、捕球音を鳴らす意識を持つのは当然のことだが、決して簡単な技術ではない。東淀川ボーイズに所属していた中学時代から捕手となり、育成選手としても4年間オリックスでプレーした男にとっても、捕球技術の奥深さに、悩むことも多かったと言う。
「今思えば現役のときは、そこまで深く考えていなかったなって。何なら、音が鳴らないときは、『ちゃんと投げろよ』なんて思うときもありましたから(笑)。でも、うまく捕って、気持ちよく投げてもらうのがキャッチャーの仕事。ブルペン捕手なら、なおのことです。だから本当に、勉強しました。ブルペン捕手の先輩たちに話を聞いて、いろんなキャッチャーの捕球姿勢の動画を今も見ています。もっともっと、うまくなりたいので」
現役時代は捕球だけでなく、ワンバウンドを止めるブロッキングに送球技術、さらには・・・
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