技術力向上のために、今やデータを基にしたアプローチは当たり前となった。ソフトバンクのデータサイエンス部門も、年々、充実した組織に。そして、ついには動作解析から指導までも担う新たな“コーチ”が誕生。自らの現役時代とは異なる引き出しをも増やしながら自らも追い求めた形を、選手たちのためにつくり出していく。 取材・構成=菅原梨恵 写真=湯浅芳昭、BBM 
R&Dグループスキルコーチ[打撃]・長谷川勇也[ソフトバンク]
違うのは伝え方
“現場”の形が変わろうとしている。ソフトバンクの
小久保裕紀監督は今年、一軍打撃コーチを2人から1人へと変更した。その上で、打撃コーチの仕事を「練習メニューの作成と打順の提案。その日の投手の攻略法、ベンチのムードづくりとネクストバッターズサークルから打席に向かう選手への精神的アプローチ」と説明。すなわち、一軍打撃コーチは打撃指導を行わないというのだ。
では、ファームではどうかと言うと、打撃練習中の選手に寄り添い、時折アドバイスを送る“指導者”の姿が1人、2人、3人。だが、精力的に活動する彼らは打撃コーチではない。役職名は『R&Dグループスキルコーチ(打撃)』。コーチという肩書こそあるものの、実際にはデータサイエンス部門に所属するチームスタッフという位置づけになっている。
3人のうちの1人、長谷川勇也氏によれば、現職の主な仕事内容は「動作解析を行って得られたデータを分析し、選手一人ひとりの特徴、課題を浮き彫りにしていく。それを踏まえた上で、課題を修正するためにはどういった方向性でいくか、改善されるような練習方法は何がいいか、などをレポートとしてまとめて選手に提供すること」だという。実はここに打撃コーチとの明確な違いがある。
長谷川氏自身、現役を引退した直後の2022、23年に一軍で打撃コーチを務めていた。そのときは「自分の目で見て感じたこと、主観での評価でアドバイスを送っていました」。だが今は、選手一人ひとりを分析した資料が基になっており、「選手への伝え方が違う」と語る。しっかり伝えるためにも、分析した結果に関してはきちんとした理解が求められるもの。スキルコーチである自分たちが理解をした上で、選手それぞれに合った練習方法をピックアップし、なぜこのような練習をするのかについて選手も理解を深められれば、練習に取り組む姿勢もおのずと変わってくるという。
もともと現役時代の長谷川氏と言えば・・・
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