現在、球界においてデータの活用は当たり前のものになっている。プロ野球において楽天がトラックマンを導入した2014年の「データ元年」以降、急速に広がりを見せていった。だが、問われるのはデータをどう活用し、能力向上に生かせるかだ。バイオメカニクスを基盤としながらボールの回転と軌道の研究を続け、時代の先頭を走ってきたパイオニアが思い描く球界のあるべき姿とは。 取材・文=杉浦多夢 写真=ネクストベース提供 
国学院大学准教授・神事努
データ革命の先駆者
もう7、8年前のことになるだろうか。あるNPB球団のスポーツ紙担当記者と話をしていたときのことだ。野球バイオメカニクスの専門家を取材してきたという記者が、その人物を知らないと言った記者に対してこう口にした。
「この業界で仕事をしていて、神事さんのことを知らないのはモグリだぜ」
NPBでも各球団が続々とトラックマンをはじめとするデータ解析機器を導入し、球速や打球角度、リリースポイントや回転数、回転軸といったデータを高精度に得ることができるようになりつつあった。プレーのさまざまな事象が数値化されてチームの戦略・戦術への活用、選手個人の状態の把握や能力向上に生かされるという、球界におけるデータ革命が起こっていた。
プレーにおける事象を数値化できるということは、例えば投手で言えば「ボールのキレ」や「ボールの伸び」といった抽象的な言葉で表されていたものが、客観的な数値とデータで説明することができるようになるということ。その先駆けの1人となっていたのが、楽天でアナリストを務めた経験を持つ国学院大准教授の神事努氏だ。IT分野と野球を結ぶ企業「ネクストベース」のエグゼクティブフェローとしてトラッキングデータ解析や動作解析で得られたデータを“見える化”し、プレーヤーや観戦者に分かりやすい形で情報を発信していった。
変化球において重力の影響のみを受けてボールが到達した地点を原点とし、回転の影響を受けてどれくらい曲がったかを図示した「変化量」はその最たるものだろう。変化の方向を「ホップ成分」や「シュート成分」という言葉に置き換えることでボールの質がイメージしやすくなり・・・
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