
さまざまな苦言、激励を若手に送っている阿部二軍監督[右]。その言葉がいい方向に向くとチームはまとまります/写真=大泉謙也
私も一軍、二軍両方の監督をやらせてもらった経験があるからこそ、監督のひと言、ひと言に重みがあることを十分に理解しています。先週も話したとおり監督の言葉というのは「絶対」なのです。
11月終盤、
巨人の
阿部慎之助二軍監督が「期待できる選手がいない」という発言をしました。つまり二軍の選手の中にそういう選手が現在いないという厳しい内容でした。阿部二軍監督は、昔ながらの心を持った男で、もちろん、選手たちを発奮させるための言葉です。それは重々承知しています。
デーブ的経験からいきますと、最近の若い選手にとってこの言葉は、すごく危険な言葉になるときがあるのです。若い選手の中には「オレはまったく期待されていないんだ」と本当に思ってしまう選手もいる。そういう選手は実際に使えないと思いますが、そういう考えを持つ選手が多いのも現実なのです。
阿部二軍監督が、そこをどうとらえて今後指導していくのか楽しみです。現役時代は、ほとんど二軍を経験していないので、若手をすべて把握するには秋季練習だけでは足りなかったはずです。春季キャンプからその作業がもう一度始まります。
それと同時に19年シーズン中に二軍を指導し、20年も残っているコーチ陣が「期待できる選手がいない」と言われどう奮起するかです。阿部二軍監督の目には成長が見られないという、コーチ陣に対するダメ出しが出たわけですからね。春季キャンプに向けて、どういう練習メニューを作り、どう選手たちを育成させるのか、コーチ陣の動きにも注目したいです。
11月26日のNPBアワードに出席した阿部二軍監督が、二軍で表彰を受けた選手に対し「自信をつけるのはいいけど過信してほしくない」という言葉を、メディアを使って発信しました。多分、二軍選手のほとんどが、阿部二軍監督の言葉に注目しています。その言葉の意味を、少しずつ理解して2月1日を迎えたとしたら、すごくいいキャンプを過ごせると思います。
実は私、阿部二軍監督のお父様とはゴルフ仲間で、よくお会いしています。皆さんもご存じだと思いますが、お父様は、
掛布雅之さんと習志野高の同級生で、中央大学では捕手として活躍された方です。アマチュア野球の名門で鳴らした方なので、野球の話をしても、プロでも監督が務まるのではないかと思うほど、野球に対して聡明な方なのです。そうした親に育てられた阿部二軍監督ですから、しっかりとした育成力も持っていると思います。
ただ一つ、私からアドバイスを送るとすれば「思いどおりに、意思を理解してくれる選手は多くないよ。時間の掛かる選手のほうが二軍には多いよ」です。まずは選手たちにぶつかっていき、いい解決法を見つけてほしいです。それが名監督への道につながります。
PROFILE 大久保博元/おおくぼ・ひろもと●1967年2月1日生まれ。茨城県出身。水戸商高から85年ドラフト1位で
西武に入団。トレードで巨人入りした92年に15本塁打。95年現役引退。野球解説者やタレントを経て、2008年に西武コーチに就任し日本一に貢献。12年からは
楽天打撃コーチ、二軍監督を経て15年に一軍監督に就任した。15年限りで辞任し、16年から野球解説者をこなしながら新橋に居酒屋「肉蔵でーぶ」を経営している。