
再三の好守で侍ジャパンに勝利をもたらした菊池
スコアだけを見れば、乱打戦(日本14安打11得点、キューバ11安打6得点)を日本が制したように映るが、試合の流れが定まらない序盤の好守が、日本に勇気とリズムをもたらした。
3月7日、対キューバ(東京ドーム)。「正直、予想以上にプレッシャーがかかっていた」と
小久保裕紀監督が振り返るWBC初戦の、独特の緊張感に包まれた初回の守備である。日本の先発・
石川歩が、最も警戒していたキューバの俊足一番打者・
サントスに、ショート内野安打で出塁を許すと、続くアヤラのサードゴロを
松田宣浩がまさかのファンブル(記録はエラー)。いずれも打ち取った当たりだったが、無死一、二塁のピンチを迎える。
浮足立ちそうな局面で、日本を救ったのがセカンドの
菊池涼介だ。続く三番・セペダの一、二塁間を襲う強烈な打球を、スライディングキャッチ。起き上がりざまに反転して二塁ベースカバーの
坂本勇人へ送球し、4―6―3の併殺を完成させた。ピンチの芽を摘み取り、傾きかけた流れを引き戻すビッグプレーに「とりあえず止める。(グラブに)入ってくれたので勇人さんを信じて投げました」と平然と語る〝忍者〟が実に頼もしい。
侍ジャパンには2013年の小久保監督就任直後からの常連。当時はまだデビュー2年目を終えたばかりの〝有望株〟という位置付けだったが、14年の日米野球での活躍を経て、「(日本に)菊池の守備は欠かせない」と絶大の信頼を置かれる存在にまで成長を遂げた。同じセカンドには2年連続トリプルスリーの
山田哲人もおり、起用法は長らく(うれしい)悩みの種だったが、「投手力を中心に守り勝つ野球」を標榜する指揮官は、今大会ではセカンドの人選も守備力を重視。山田をDHに回す決断を下していた。
そんな指揮官の期待に応えるプレーがもう1つ。5点リードの9回一死一、二塁の場面だ。二番・アヤラの一、二塁間への打球をスライディングキャッチ。終盤に追い上げられる嫌なムードを振り払う再びの好守で日本を救った。
文=坂本匠 写真=小山真司