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センバツ・リポート/勝利の裏側

鉄腕・三浦銀二と“心中”する福岡大大濠

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滋賀学園との再試合も130球を投げ完投し、チームを勝利に導いた福岡大大濠の三浦



 今大会出場32校中、昨秋の公式戦で、救援に頼ることなく投げてきた投手は、一人しかいない。福岡大大濠の右腕エース・三浦銀二は県大会、九州大会、神宮大会を通じ13戦、マウンドを譲ることはなかった。

 センバツでも、その戦い方は不変。創志学園との1回戦を3失点完投(149球)すると、滋賀学園との2回戦は延長15回引き分け(1対1)で、196球を投げ抜いている。

 中1日での再試合。福岡大大濠・八木啓伸監督は当日朝、コンディションを見極めた上で、三浦の先発を決めた。しかし、あくまで〝事務的な確認〟に過ぎず、両者の思いは通じ合っていたようだ。

「本人は行く気満々。ここまで導いてくれた意気込みにこたえたい」

 当初は前日の第4試合に組まれる予定だったが、健大高崎と福井工大福井の2回戦も引き分けとなり「中1日」となり休養が取れた。とはいえ、疲労が心配だ。報道陣から「継投」についての質問が飛んだ。

「そのスタイルはやっていない。基本的には三浦でいく。継投の場合は、投手経験のある野手2人でいく」

 ベンチ入り18人で投手登録は背番号10の右腕・徳原世羅(2年)のみ。だが、甲子園入り後も調子が上がらず、試合で起用できる状態ではなかった。中学時代にマウンドに立ったことがある捕手の古賀悠斗、中堅手・西隼人を準備させていた。だが、八木監督は事実上、鉄腕・三浦と心中する構えでいた。

 さて、28日の再試合は絶対的エースを打線が援護。バッテリーを組む古賀も、3対2の5回に貴重な追加点となる2ランを放って、三浦を助けた。福岡大大濠は5対3で滋賀学園を下した。三浦は130球を投げ、7安打完投で、春は初の8強進出を決めている。

「三浦の頑張りがあったからこそ、倍うれしい」(古賀)

「古賀の一発で楽に投げられた。疲れはあったので、いつも以上に腕を振った。ストレートが走っていないので、変化球をうまく使いながら、的を絞らせないようにした。完投? 全部自分が行くつもりでした」

 三浦は9回にも142キロを投げる、強じんなスタミナの秘訣について聞かれたが「特にありません。負けたくない気持ちが強い」と語った。

 福岡大大濠は1989年夏に準々決勝に駒を進めており、同校最高成績に並んだ。明日29日の準々決勝は報徳学園と対戦する。相手は中2日。条件としては福岡大大濠がやや不利に映るが、気力の充実ぶりでいけば、五分の勝負と言えるだろう。

「投げる気持ちは忘れずに、チームを勝たせられる投球をしたい」

 よほどのアクシデントがなければ、八木監督の心は決まっている。当然、三浦も腕を振り続けるつもりだ。

文=岡本朋祐 写真=BBM

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