
トヨタ自動車に籍を置きながら、亜大で学び、野球部の指導も行っている二葉祐貴コーチ
4月4日、東都大学リーグ戦が神宮で開幕した。第2試合では亜大が専大に逆転勝利を収めた(5対1)。
亜大は3回に1点を先制されたが、5回に追いつくと、7回に一挙4得点。専大のプロ注目のサブマリン・
高橋礼(4年・専大松戸)を攻略した。投げてはドラフト候補左腕・
高橋遥人(4年・常葉橘)が7回1失点で勝利投手となっている。
三塁側の亜大ベンチで感慨深い〝初勝利〟を噛み締めたのが、背番号52だった。
「モットーが全力疾走と全力発声。4年生はまとまりがあって、チームワークが良いんです。練習からの積み重ねがゲームでも出た。守備からリズムを作って、攻撃につなげた」
二葉祐貴。PL学園高では
広島・
小窪哲也と同期であり、卒業後はトヨタ自動車で活躍。日本選手権優勝4回、都市対抗優勝1回、さらに社会人日本代表にも名を連ねたアマチュア球界屈指の名捕手であった。
昨シーズンの開幕前から2016年限りでの「現役引退」を決めていた。まだ体は動くが、将来の指導者の道を見据えた選択であったという。「すべてをかけていた」と語る昨夏、結果的に〝都市対抗初優勝〟で有終の美を飾ることができた。
社会人入試で亜大経済学部に入学した。今年4月21日で32歳。大学4年間、一般学生と机を並べて勉強する。「学生」とはいえ、所属はトヨタ自動車の「総務・人事本部 スポーツ強化・地域貢献室 エキスパート」。つまり、この4年間は研修期間だ。
「会社として、トヨタをもっと強くするために、日本一の監督の下(亜大・生田勉監督)でしっかりした野球、戦術面、選手育成を勉強する。自己啓発で大学にも通っています」
今年1月から指導を開始。昨年1年間、トヨタ自動車で亜大OBの入社1年目・
北村祥治(星稜高)、
藤岡裕大(岡山理大付高)とプレー。両選手ともルーキー年からレギュラーとして活躍できた理由が分かった。
「若くてもチームのために動けるのは、自己犠牲があるから。4年間の人材育成の賜物だと思いました」
家族とともに愛知から上京し、東京都内の社宅で生活。グラウンドでの指導、大学での授業、そして神宮でのリーグ戦と多忙な日々が続く。
母校・PL学園高は3月29日、大阪府高野連から脱退した。15年から新入部員の募集を停止し、昨夏の府大会限りで「休部状態」にある。二葉コーチは言う。
「寂しいですが、
前田健太らPLのOBが各分野で活躍している。自分もこの立場で、頑張っていきたい」
名門・PL学園高、トヨタ自動車で磨かれた〝魂〟を亜大へ注入し、自らも社会人としての幅を広げていく。
文=岡本朋祐 写真=BBM