
2002年の日本シリーズ、和田のセンターへ抜けようかという当たりを見事なポジショニングで防いだ仁志
グラウンドのコンダクター――。深淵なる二塁手の世界を来週発売の週刊ベースボールで特集するが現在、作業は佳境に入っている。
菊池涼介(
広島)の守備を徹底分析することはもちろん、成長株の
浅村栄斗(
西武)や熟練者の
荒木雅博(
中日)が二塁守備を語るインタビューも興味深い。さらに
辻発彦(西武監督)、
高木豊(元大洋ほか)、そして
仁志敏久(元
巨人ほか)にも、じっくりと話を聞いているので、読者の方々にはぜひ手に取ってほしい一冊だ。
二塁守備の奥深さが大きくクローズアップされた試合として記憶に残るのは2002年、巨人と西武の日本シリーズだろう。東京ドームでの初戦、西武打線は立ち上がりが不安定な
上原浩治を攻め立て二死一、二塁と先制のチャンスを作る。打席にはこのシーズン、外野手に転向し打率.319、33本塁打をマークした五番・
和田一浩。3球目を強振した打球は二遊間へはずんだ。
しかし、あらかじめセカンドベース寄りに守っていた仁志敏久に好捕され、あえなくアウト。「抜けたと思ったんですけど、しゃあないですわ。見たら(仁志が)いたので……」と嘆いた和田だが、「しゃあない」どころでは済まなかった。和田はこのシリーズ、15打数無安打と〝逆シリーズ男〟に陥り、チームも4連敗を喫して屈辱的な敗戦となった。
仁志は「あの場面は自分の感性を信じて動いた」と試合後に語ったが、和田の強い当たりはセンターから左、一塁寄りにはボテボテの当たりしか飛ばないというデータを頭に入れてのポジショニングだったはずだ。日本シリーズの行方を左右したビッグプレーの記憶はいつまでも色あせない。
文=小林光男 写真=BBM