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大学野球リポート/東京六大学リーグ

“ポスト・加藤拓也”の慶大・関根智輝は超優等生

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1年生ながら開幕戦に先発し、見事に勝利を挙げた関根



 広島のルーキー・加藤拓也がプロ初登板初勝利を挙げたが、大学時代は1年春から登板し26勝をマーク。4年間8シーズン、離脱することなく、慶大のマウンドを守ってきた。

 この大黒柱の穴を埋めるのは、簡単なことではない。加藤卒業後、在校生で、神宮勝利を挙げていたのは2人のみ(各1勝)。早大の27勝を筆頭に、法大18勝、明大9勝、東大6勝、立大4勝。実績から判断して、東京六大学2017春季リーグ戦で慶大の下馬評は、決して高くなかった。

 迎えた東大との開幕戦(4月15日)、先発を任された1年生・関根智輝(都立城東高)が5回1失点で勝利投手。慶大で1年生が春の開幕投手を務めるのは宮武三郎以来、90年ぶりの快挙であった。

〝都立の星〟としてドラフト候補にも挙がった逸材は、AO入試(書類審査、小論文、面接)のⅡ期で、環境情報学部に入学したエリートだ。

 2年秋、3年春と東京都大会8強。3年夏の結果次第では、プロ志望届を提出する覚悟を決めていたが、大会前の胃腸炎により、ぶっつけ本番となった。強豪・帝京高との準々決勝を制して、存在感を示したものの、準決勝で涙をのんだ。

 大事な夏に、ベストコンディションに持ってこられなかった未熟さから、プロは断念。慶大進学に切り替え、1日10時間以上の猛勉強が実った。

 昨夏の甲子園準優勝投手の北海高・大西健斗とともに、ベンチ入りメンバーが生活する30人限定の第一寮に抜てきされた。沖縄キャンプにも帯同し、英才教育を積んできた。

 2月上旬、練習合流時の注目度では大西が上だったが、「良い刺激にもなりますし、負けたくない」と、静かにライバル心を燃やしていた。

 マウンドでは堂々としているが、普段は表に出ることを嫌う。高校時代も脚光を浴びる中、謙虚さを見失わず、率先して雑用も行った。集合写真に収まる際も最後方の列、目立たない場所に並んだという。慶大の練習初合流時も、1年生がベンチ前に並ぶ際には、端の方に立っていた(しかし、183センチ右腕は頭一つ抜けていた)。

 心優しい男も、芯は強い。慶大志望の理由も具体的だった。

「セカンドライフのことも考えて、勉強にも力を入れたい」

 4年後にプロへ再挑戦するつもりだが、大学では栄養学、運動生理学などを学びたいという。一度、話してみれば応援したくなる選手。それは、野手の援護にもつながるはずだ。

 慶大は東大戦を連勝で勝ち点1。懸念されていた「ポスト・加藤拓也」は早くも、開幕カードで解消された。次カードは22日からの立大戦。超優等生の慶應ボーイ・関根智輝が、神宮の新スターへ上り詰めていく。

文=岡本朋祐 写真=川口洋邦

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