
5月9日、東京ドームでの阪神戦の7回、左翼席に今季3号となるソロ本塁打を放った石川慎吾
若手の伸び悩みが叫ばれて久しい
巨人にあって、24歳の石川慎吾が外野の定位置争いにハツラツと参戦中だ。昨オフに
日本ハムから巨人にトレード(
吉川光夫を含む2対2。巨人からは
大田泰示、
公文克彦が日本ハムへ)加入した右のパワーヒッターで、人呼んで“ダイナマイト・シンゴ”。生え抜きではないところに一抹の寂しさを覚えるが、将来を期待して獲得した若武者である。素直に彼の台頭を喜ぶべきだ。
昨秋の移籍後は巨人秋季キャンプにも参加し、ここでセールスポイントの打撃をアピール。「思い切りのいいバッティングをする選手というイメージ」と、もともと日本ハム時代からマークしていたという
高橋由伸監督の評価をさらに高めた。今春のキャンプも一軍に抜擢され、ついには開幕一軍を勝ち取っている。当初は代打も、徐々にプライオリティーを高めていき、現在は左翼でコンスタントに先発出場中。昨季24本塁打の
ギャレット.Jが骨折、FA加入の
陽岱鋼も下半身のコンディション不良でいまだ三軍調整中と、強力なライバルたちがこぞって不在の運も味方につけた。
持ち味はやはりバッティングで、初球からでも、追い込まれても、フルスイングができることが魅力。関西人のイメージどおり、早くもチームの盛り上げ役にもなっており、良い意味で“巨人らしくないプレーヤー”である。ちなみに、5月14日時点で規定打席には未到達ながら、長打率は
坂本勇人、C.
マギー、
阿部慎之助のクリーンアップトリオに次いでチーム4位の・467。5月7日の
中日戦では
田島慎二から広いナゴヤドームの右翼席(いわゆる反対方向)に突き刺す一撃を放つなど、その潜在能力は「前評判以上」ともっぱらだ。
5月10日の阪神戦からは一番でも起用されており、
村田真一ヘッドコーチには「淡白でもいいから、ガンガン行け」と全球フルスイング指令。なお、高橋監督も現役時代の2007年に一番に固定され、プロ野球新記録となる初回先頭弾9本を放っており、指揮官のように超攻撃的な姿勢で打戦に勢いをつけることが期待されている。脚力に長打力を併せ持つも石川がこのまま一番に定着すれば、チームの得点力も格段に上がる、という計算だ。
なお、“ダイナマイト・シンゴ”は日本ハム時代に「豪快な打撃にあやかって名付けられたニックネーム」と各媒体で紹介されているが、これは誤り。本人いわくこう呼ばれるようになったのは「巨人に入ってから」だそうだ。日本ハム二軍の本拠地である鎌ヶ谷では、一軍と異なる独自の応援スタイルが存在するが、巨人二軍との対戦時にたまたま「ダイナマイト」と声を掛けられるシーンを目撃した巨人の選手が、石川移籍後のベンチで、これを冗談でマネて声掛けしているところを記者が耳にし、記事となって急速に広まった、と本人も推察している。
さて、そんな石川に『週刊ベースボール6月5日号』(5月24日発売 ※一部地域を除く)でインタビューを行った。“ダイナマイト”に対する思いや、移籍、プロ5年目のシーズンなど、24歳の現在地を余すところなく話しているので、ご期待ください。
文=坂本 匠 写真=大泉謙也