
5月21日のロッテ戦で今季3本目の初回先頭打者アーチを放った茂木(左)。強いスイングがその武器だ
ZOZOマリンで行われた5月21日ロッテ対
楽天戦のプレーボール直後。「初球を狙っていた」という楽天の
茂木栄五郎は
唐川侑己の真ん中高め、143�祖承紊魄�っぱたいた。打球はバックスクリーン右に飛び込む9号アーチ。この一発は今季、茂木にとって3本目の初回先頭打者アーチとなった。楽天は2対3と逆転負けを喫したが、強打の一番打者が首位を走る要因となっているのは言うまでもない。
初回先頭打者アーチの日本記録保持者は現
巨人監督の
高橋由伸だ。プロ10年目を迎えた2007年。開幕直前、
原辰徳監督にトップバッター起用を告げられた。前年まではわずか3試合しか経験のない打順に、高橋は戸惑いを隠せなかった。
当然といえば当然だ。桐蔭学園高、慶大では四番に座り、1998年のプロ入団以降も主にクリーンアップを任されてきた。自分のバットで走者をかえしてきた男が、今度はチャンスメークの立場に回るのだから、戸惑うのも無理はない。
心のどこかに引っ掛かりを覚えたまま迎えた開幕の横浜戦(横浜)。1回に
三浦大輔の初球を右中間スタンドに運び、チームを勝利に導いた。それでも「今のままで果たしていいのか。一番打者として機能しているか、分からないところがある」と確信が持てないままでいた。開幕から約3週間。一番打者としては出塁率を上げることは必須条件(4月末時点で.364)であることは理解している。しかし、無理やりフォアボールを選ぶようなことは、自分のスタイルではない。
「僕は初球からとらえにいくタイプのバッターですから」
その迷いが吹っ切れたのは指揮官からの「スタイルはまったく変えなくていい。ただ一つだけ注文がある。相手投手を観察し、後ろの打者に伝えてくれ」という言葉だった。従来の一番打者といえば、ボールを慎重に選び、塁に出てチャンスを広げるというもの。しかし、原監督は好球必打の振っていける姿勢を求めた。
このアドバイスをきかっけに、トップバッターという新天地で背番号24は躍動し始める。ボールを慎重の選ぶのではなくプレーボールと同時に攻撃的なスイングで投手にプレッシャーをかけていく。多少のボールでも初球から鋭くスイングするスタンスは脅威となった。
「僕は積極的に振っていくタイプのバッターです。そこの部分を変えてしまうと、自分のリズムがおかしくなってしまう。打てるボールは打ちにいくし、そうでないボールは見極めていく。そういう自分のスタイルを崩すことなく1年間続けられれば、自然と数字も残せると思います」
最終的にこのシーズンは、打率.308、打点88、本塁打はキャリアハイの35本を放った。7月26日の横浜戦(東京ドーム)ではマット・ホワイトからプロ野球新記録となるシーズン9本目の初回先頭打者本塁打を記録。一番打者としてボールの見極めも意識し、自己最高の66四球、出塁率.404。さらに初球打ちの打率は.441、得点圏打率は.409と12球団トップの勝負強さも発揮した。
従来の一番打者像を塗り替えるほど鮮烈な印象を残した高橋の働きもあって、巨人は5年ぶりの優勝を果たした。今季の楽天も強打を誇る茂木が高橋の初回先頭打者アーチ記録に迫れば迫るほど、4年ぶりの頂点に達する可能性は高くなるに違いない。
写真=高原由佳