
中央が藪。いまではやや太めとなってしまったが、当時はスリムな体型で“球界の織田裕二”とも呼ばれた
プロ野球の歴史の中で、日付にこだわって「その日に何があったのか」紹介していく。今回は5月24日だ。
5月23日から甲子園で始まった
阪神─
巨人の伝統の一戦。今年は首位・阪神に3位・巨人が挑む形となった。2戦目、24日の先発は甘いマスクの左腕・
能見篤史の先発が濃厚だが、1994年阪神に入団し、“球界の織田裕二”と言われて女性ファンに絶大な人気を誇ったのが、藪恵市(現
藪恵壹)である。
94年5月24日は、今年と同様、甲子園で行われた巨人戦で、藪が巨人戦初登板初完投完封勝利を飾った日だ。阪神では史上初、球界では、いきなりノーヒットノーランで達成した87年の
近藤真一(
中日)以来だ。
当時、阪神に「新人が巨人戦に先発するとは……」という雰囲気があった中での先発。ましてマッチアップは
槙原寛己。前登板(5月17日
広島戦)で完全試合を達成しており、打線も2試合連続でパーフェクトを食らうのではないかと戦々恐々としていた。
しかし、2回裏に
オマリーが安打を放ち打線が落ち着くと、3回裏に3点を奪った。槙原もこの3失点のみの好投だったが、藪はこの点を最後まで守り抜き完封勝利。勝った瞬間は「ああ、終わった」としか思えないほどしんどかったという。
巨人戦初登板完封は伝統の一戦の長い歴史の中では、この日の藪と2016年5月27日の
岩貞祐太の2人しかいない。
写真=BBM