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“午前11時の男”広島・田中広輔

 

不動の一番・遊撃となった田中


 多くの場合、選手への取材はホームゲームでの試合前、練習前後に行うことがほとんどだ。18時開始のナイターだと、だいたいは選手が球場入りする13時か練習が終わった16時ごろにスタートするのだが、広島田中広輔の取材ではなぜか11時開始となる。田中はどうして、これほど早い時間を希望するのか。その答えを河内貴哉広報が教えてくれた。

「田中は11時半からマッサージを受けるのがルーティンになっています。だからその前にしか取材を入れられないんです」

 昨季は主に一番・遊撃として全試合にフルイニング出場。今季もその定位置で、開幕から全試合フルイニングに出場している(5月26日現在)。最も多く打順が回り、守備でも負担の大きい場所だ。そこで試合に出続けるには、グラウンド外の行動も重要になってくる。

 だが、田中は疲労を決して表には出さない。18時開始のナイターの場合でもときには13時にはグラウンドに姿を現し、堂林翔太野間峻祥ら、若手とともに早出の打撃練習で汗を流している。

「田中だけではなく丸(佳浩)なんかもそう。早くに球場に来て試合に備えている。若手は毎日特打があるし、ウチの練習量は本当にすごいと思う」

 自身も現役時代を過ごしたチームではあるが、現在の選手たちの努力に河内広報はそう舌を巻く。

 球場で軽やかに躍動する田中。だが、試合開始の7時間前にはすでに球場にいたと思えば、華やかなプレーも違って見えるかもしれない。

文=吉見淳司 写真=榎本郁也
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