
阪神ファンからは罵声、そして巨人ファンも「王さんをお手本に!!」の垂れ幕で分かるように決して好意的ではなかった(中央が江川)
プロ野球の歴史の中で、日付にこだわって「その日に何があったのか」紹介していく。今回は6月2日だ。
今年は新人投手の当たり年とも言われ、多くのルーキーたちが一軍デビューをしているが、6月1日時点では規定投球回到達者はなし。
DeNA・
濱口遥大、
ヤクルト・
星知弥、
オリックス・
山岡泰輔らが先発ローテで踏ん張っているが、まだまだ未知数だ。
5月31日の
楽天戦(Koboスタ宮城)では、巨人のドラフト4位・
池田駿がプロ初先発。中継ぎとして19試合に投げた実績を評価されての抜てきだった。
1979年6月2日、日本球界史上、最も騒がれた新人デビュー戦があった。巨人の
江川卓である。78年11月末からの大騒動については、ここではとても収まらない。簡単に言えば、高校、大学時代、怪物と言われた超大物投手・江川は、巨人入団を願うもかなわず、阪神にドラフト1位で指名されたが、1月31日に阪神に入団を発表した日の深夜、巨人の
小林繁とのトレードが決まり、その夢を成就させた、ということである。ただし、その強引極まりない手段に、日本中からバッシングを浴びることになった。
江川はキャンプ、オープン戦には参加せず、一軍登録も球団判断で5月31日まで自粛。その間、イースタンで2試合を投げ、6月2日、因縁の阪神戦(後楽園)での一軍初登板初先発が決まった。
マウンドで江川はまず観客に頭を下げる。それに拍手と罵声が飛ぶ異様な雰囲気となった。
江川は、この日8回126球を投げ、スピードガンの最速は138キロと物足りず。7安打を許し、うち4回にスタントン、7回には
若菜嘉晴にソロ、そして二死から
ラインバックに3ランと3本のホームランを浴び、敗戦投手となっている。最終的には9勝10敗、防御率はリーグ3位の2.80と決して悪くはなかったが、小林が22勝9敗1Sとすさまじい活躍を見せ、影は薄く、巨人ファンもフラストレーションを募らせた。
この日のテレビ視聴率は36.4パーセント、ライバックの3ランのシーンの瞬間視聴率は46.8パーセント。まさに日本中が注目した一戦ではあった。
写真=BBM