
チームに必要不可欠な存在となっている甲斐
現在発売中の週刊ベースボール6月26日号の連載インタビュー企画には
ソフトバンクの正捕手争いを繰り広げる
甲斐拓也が登場している。6月13日時点で盗塁阻止率は12球団トップの.500。「それがあるからこの世界に入れた」と認める強肩で存在感を放っている。
その肩の強さを持つ上で、甲斐が重視しているのが制球力だ。二盗阻止を考えた際、捕球からスローイングに移るスピードと投げるボールの強さを一定水準でクリアした場合、次に問われるのがそれ。ベースカバーに入った野手が捕球した個所からタッチまで大きくグラブを動かす必要があれば、その分、アウトにできる可能性は下がる。
「どんなに持ち替えが早くても、どんなに肩が強くても、投げたボールが逸れてしまえばセーフになる。そこで少し劣っても、走者が滑り込んでくるところのベースの角にさえ投げられればアウトにできる」
そう極意を語っている。
そのコントロールを可能にしているのが、甲斐のフットワークの良さだろう。身長は公称170センチ。プロ全体でも小柄だが、捕手の冠の下ではさらにそれが引き立つ。それでも、「この体だからできることがある」とハンディとはしていない。
大分で過ごした中学時代に所属した大分シニアは
脇谷亮太(現
巨人)、
田中太一(元巨人)らが在籍していた強豪チーム。それらの選手をコーチとして指導した吉松俊文現監督が「過去に見てきた選手の中でセンスはピカイチ」と評価するのが甲斐だ。フットワークの良さと強肩を買い、「併殺を狙えるから」とセカンドで起用されていた。甲斐が捕手に転向するのは楊志館高に進学後のこと。さらにプロに続いた礎は中学時代に築かれていた。
今季開幕から捕手3人体制を敷いてきたソフトバンクだが、6月10日の
阪神戦で
高谷裕亮が右手中指を骨折して離脱。甲斐がスタメンマスクをかぶる機会はさらに増えるはず。インタビュー記事のタイトルどおりの「カイ・進・撃」がいまから始まる。
文=菊池仁志 写真=湯浅芳昭