
センバツでは捕手だった雪山が今夏、早実の背番号1を背負うことになった
6月26日に発売した『第99回全国高校野球選手権東・西東京大会展望号』では、東大会(134チーム)と西大会(128チーム)の全出場校の戦力分析、注目選手を掲載している。
6月17日の組み合わせ抽選会で、報道各社にベンチ登録メンバー表が配布されるが、驚いた事実があった。
早実の背番号1の欄に「
雪山幹太」の名前があったのだ。1年秋から正捕手で、センバツにも背番号2でプレーしている。だが、春の都大会後、キャッチングに不安(前年冬、交錯プレーで左手親指の付け根を痛めていた)を残すことから、打撃に専念することから中堅手へ転向した。
早実は高校通算103本塁打の
清宮幸太郎、同40本塁打の2年生四番・
野村大樹と、打線は全国屈指のレベルにある。一方、昨秋の新チーム以来、投手力にやや不安を残していた。
昨秋の途中から先発に定着し、センバツで主戦として期待されていた2年生・中川広渡は右肩違和感により、甲子園では登板できなかった。
春の都大会では3年生・服部雅生を軸に回したものの、指揮官の信頼を得るまでには至らなかった。今春は関東大会を含めた公式戦8試合で89得点に対して失点は56。1試合平均7失点でも勝ち上がったのは、どんな展開でもあきらめない粘りの姿勢が根底にあるが、夏も同じ展開に持ち込めるとは限らない。
そこで、和泉実監督は「投手・雪山」のカードを斬った。雪山は中学時代に在籍した神戸中央シニア時代は投手で、不安はなかった。指揮官は内情をこう語ったことがある。
「高校野球で、いろいろなポジションをやらせるのは当然のこと。ウチの場合、実際、戦力として計算できる選手は、12~3人しかいない。その中でどう、やりくりしていくか」
今夏、三塁から捕手へ移った野村も投手としてもスタンバイするように、和泉監督は可能性のある選手は積極的に試し、公式戦で使えるか見極める。早実は関東大会後、沖縄、名古屋、香川と招待試合を重ねた。“清宮効果”で多くの観衆の中で、経験を積めたのは大きな収穫。その結果、雪山の「背番号1」に至ったのである。
野球センスの塊。捕手経験者だけに、テンポの良い投球が野手にリズムを与えるはずだ。今春の日大三との決勝は勝利したが、18対17と「ノーガードの打ち合い」(日大三・小倉全由監督)となった。今夏も両校とも勝ち上がれば、決勝で再び顔を合わせることとなるが、新捕手の野村は「片手(5点以内)には抑えたい」と語る。投手陣の奮起が、春夏連続出場へのポイント。新エース・雪山の投球に注目だ。
文=岡本朋祐 写真=菅原 淳